クレアチン、脳機能にも有効か 世界的に研究進む(2015.5.21)
スポーツニュートリションとして多くのアスリートに愛用されているクレアチンの研究者が世界各国から集まり、最新の研究成果を披露する「クレアチン・カンファレンス」が先月21日から4日間ドイツで開催、2010年以来2回目となる今回の会議では、脳機能に作用する「ブレイン・フード」の側面からの発表も目立った。機能用途に広がりを見せつつあるこの成分を巡り日本では、機能性表示食品制度への対応準備も進んでいる。
会議の主催は、クレアチンの世界市場で過半数のシェアを握る独アルツケム社。クレアチンモノハイドレート「クレアピュア」を製造販売している。
クレアピュアの日本販売窓口を担い、前回に引き続き今回の会議に参加したクレアピュア事務局(ヘルシーナビ、兼松ケミカル、ユニテックフーズ)によれば、今回は、「脳機能関連の発表が顕著に多かった」のが前回会議との大きな違い。日本の研究者も予備的臨床試験結果を発表し、クレアチンの摂取が作業記憶など脳機能改善に繋がる可能性を示唆した。
発表したのは立命館大学の黒澤裕子研究員(スポーツ健康科学部)。薬を服用していない健常者を対象にしただけに、被験者数は少ないが、高齢者にクレアチンを摂取してもらったところ、作業記憶や短期的・長期的な記憶力の改善傾向が見られたと報告した。
黒澤氏は米シンシナティ大学でクレアチンの代謝や脳血管疾患の検証を重ねてきた研究者で、脳クレアチン欠乏症候群の国の臨床研究班にも参画。これまでにクレアチン摂取による局所筋持久力改善作用など筋肉にかかわる機能を発表しているが、最近では脳機能を巡る研究に注力する。社会的価値の高い機能性だけに、同事務局でも研究の進展に期待を寄せている。
一方、市場に完全定着したといえるスポーツニュートリション関連の研究報告も少なくなかった。新知見としては、脳しんとうのダメージを抑えるという報告があった。ラグビーなど接触スポーツに従事するアスリートに対し、筋肉とは別の側面からベネフィットを提供できる可能性がある。
「研究は依然盛んに行われている。発表者の顔ぶれを見ても、各国の著名な大学に所属している方が多い。ブラジルやインドからも研究者が参加していた。まだまだ将来性の高い成分と見られていることが窺われる」──同事務局では会議全体の印象をこう話す。
クレアチンの市場動向を巡っては、クレアチン派生物質が台頭した時期が過去あった。ただ、ここ数年で純度の高いモノハイドレートの品質評価が再び高まり、アルツケムでも生産量を増加。主要市場の米国でも販売量は依然伸びているという。こうしたカンファレンスを主催し、クレアチン研究の進展をサポートすることで、市場存在感を更に高める構えだ。
日本でもクレアチンは多くのアスリートに愛用されており、クレアピュアの市場占有率は約8割とされる。その中で、市場のパイが大きくなる可能性として同社でも機能性表示食品制度に注目。同事務局でも研究レビュー(システマティックレビュー)を行う準備を進めている。
クレアチンで機能性表示を行える可能性は高い。EFSA(欧州食品安全機関)が2011年、ヘルスクレームを許可したためだ。
認められた機能性は「短期間および高負荷の反復運動における身体能力の向上」。1日当たり摂取量は3㌘とやや多いが、「機能性表示を行えれば、スポーツ愛好者など一般層にも拡販できるようになる」と事務局では話している。