トクホにない表示挑戦 機能性表示、各社の届出注目(2015.5.21)
機能性表示食品の届出準備を原料メーカーなどが着々と進めている。これまでに公開された届出情報の中には、特定保健用食品では申請も許可もされてこなかった機能性表示がいくつか届け出られているが、まだまだ増えそうな気配だ。蓄積してきたエビデンスがいよいよ消費者のために生かせると、各社がチャレンジしている。
「更年期」表示に挑む
更年期女性の体調を整える──アグリコン型大豆イソフラボン原料「アグリマックス」を製造販売しているニチモウバイオティックスは、このような機能性表示を大豆イソフラボンで行える可能性があると見ている。現在、研究レビュー(SR)を進行中だ。
「更年期」は、米ダイエタリーサプリメント制度では疾患とは見なされていない。
更年期女性の体調に対するアグリマックスの有効性は、米ハーバード大学が実施した更年期女性190名による二重盲検査臨床試験で認められている。摂取群は更年期の女性に多い「ほてり」がプラセボ群と比べて有意に低減。論文は米国更年期医学会の査読付き学術誌「メノポーズ」に2008年、掲載された。
SRは国内大学研究者らに委託。終了次第、通販などで販売展開している自社商品について機能性表示食品として届出を行う。同時に、届出様式にまとめたSRを原料供給先に活用してもらえる体制を整える。これにより、アグリマックスを機能性表示素材として拡販したい考えだ。
アグリマックスの有効性を報告する二重盲検臨床試験の査読付き論文はハーバード大の一報のみ。ただ、大豆イソフラボンと更年期をキーワードにした査読付き臨床試験論文は多く、科学的根拠を補助的に説明できるアグリマックスの臨床試験データも複数ある。
「これまでに多大な研究投資を行ってきた。機能性表示食品制度に必ず活かしたい」と同社担当者は話している。
「認識力」「便通改善」も
原料販売・受託製造のビーエイチエヌでは、認識力向上や精神的ストレス改善など脳にかかわる機能性表示にチャレンジする。原料供給している大豆由来ホスファチジルセリン(PS)を機能性関与成分として実現したい考えだ。
科学的根拠はSRで説明する方針。競合他社とも協力し合いながら表示実現を目指し、PS市場拡大につなげる。
同社によれば、PSでの機能性表示に関する問い合わせは非常に多いといい、SRと届出様式を準備することで市場の期待に応える。機能性表示が実現すれば、「市場はマスマーケットに広がる可能性がある」と期待を寄せている。
同社ではほかにも大麦βグルカンでSRを進行中。毛髪やつめに対する有効性が査読付き論文で報告されているコリン安定化オルトケイ酸でも機能性表示に対応していく方針だ。大麦βグルカンについては、SRの経験がある複数の外部有識者に委託契約する形で進めており、他の成分についてもこの形でSRを行う計画を立てている。
健康食品受託製造最大手のアピも届出を行う計画だ。機能性関与成分にするのは、独自素材として昨年からOEM製品開発を推進している「沈香葉(じんこうよう)エキス末」に含まれるゲンクワニン配糖体。これを配合したサプリメントで今月中にも書類提出する準備を進めている。
沈香葉エキス末は、同社ほか岐阜薬科大学、独立行政法人科学技術振興機構の産学官連携で開発したもの。小腸の蠕動(ぜんどう)運動を介した整腸機能のあることが確認されている。便通改善機能にかかわる機能性表示を届ける予定だ。
同原料の有効性と安全性を検証した二重盲検クロスオーバー臨床試験の結果をまとめた論文は今年2月、国内査読付き学術誌「薬理と治療」に掲載された。届出に当たっては、機能性関与成分の研究レビューで機能性の科学的根拠を説明する方針で、これにより、同社は「機能性表示食品として多様なOEM商品開発が可能になる」と見込んでいる。