健康産業界の専門紙・健康産業流通新聞

　機能性表示食品制度への対応を巡り、一部の原料事業者が最終製品販売会社に対する届出支援を積極的に進めている。研究体制が不十分な中小企業が新制度を活用するには、原料事業者のサポートが必要不可欠。システマティックレビュー（研究レビュー）をホームページに公開する事業者も現れた。

　外部の有識者と連携して行ったＳＲをホームページに公開しているのは㈱オムニカ（東京都文京区）。機能性表示食品の届出を行いたい販売会社に対する届出支援の一環だ。届出受理第1弾商品が公表された4月17日以前から始めていた。

　模倣を懸念する声も強い機能性表示食品のＳＲを先んじてホームページで全面公開するという話題も手伝ってか、同社には機能性表示食品を巡る新規取引の引き合いが多く舞い込んでいる。ＳＲ公開の眼目である届出支援も「順調に進行」しているといい、引き続き販売会社からの支援要請に応じていく方針だ。

　同社がこれまでに公開したＳＲはルテイン2報、ビルベリーエキス1報の計3報。ビルベリーでは眼疲労改善作用、ルテインでは黄斑色素光学密度増加による目の健康維持、コントラスト感度およびグレア感度改善による視機能の維持・向上についてそれぞれ検証した。いずれも有効性が期待されると結論している。

　今後、ほかの機能性関与成分についてもＳＲをホームページで順次公開していく計画だ。直近では、関節対応素材のサミー含有酵母、男性機能改善素材のサポニン含有百歳山参の2成分となる見通し。機能性表示食品制度は「サプリメントや健康食品が広告の対象物ではなく、食品の三次機能を消費者に初めて適切に提供できる自立したものになる」と見て、まずは需要の多い素材からＳＲを進めていた。

　ホームページに公開したＳＲは、著作権者の同社の許諾を得た上で販売会社に自由に活用してもらう。加えて、機能性表示食品を届け出るために必要となる提出資料全般の作成を支援する。「機能性に関しては届出書の別紙様式Ⅴ』が重要だが、ＳＲを説明する『Ⅴ‐4』ばかりに関心が集まっているきらいがある。科学的根拠の補足説明資料など、その他10数種類以上の資料もしっかりまとめなければ、後に不備の生じる可能性がある」ためだ。

　安全性や製造・品質管理、表示しようとする機能性を含めた届出食品の基本情報に関する提出資料の作成もサポート。機能性表示に関しては「包装容器への表示で不実を表現することよりも、確実に保健機能食品とすること、いわゆる健康食品ではない扱いになることが目標と奨めたい」といい、提出資料の作成に当たっても、「現状では弱い部分も含めて隠さず明かす」と話す。

　関節対応素材など取扱い原料2製品の研究レビュー（システマティックレビュー）を㈱龍泉堂（東京都豊島区）がこのほど終え、原料供給先が機能性表示食品として届出を行える体制を整えた。機能性関与成分のＳＲで機能性を説明する場合に必要となる、届出資料一式に落とし込む形で結果をまとめており、守秘義務を交わした上で各社に活用してもらう。

　ＳＲを行ったのは非変性Ⅱ型コラーゲンと、パン酵母由来βグルカン（β-1,3/1,6-グルカン）の2成分。前者は同社が日本で独占的に供給している関節対応素材「ＵＣ‐Ⅱ」、後者は同じく抗疲労・抗ストレス素材「ウェルミューン」のそれぞれ有効成分。ＳＲは米国の専門機関に委託する形で実施、「当社のバイアスのない、信頼のおけるＳＲが行われた」と話している。

　同社によれば、ＳＲの結果、非変性Ⅱ型コラーゲンの機能性表示として行える可能性が高いのは「膝関節の快適性・柔軟性・可動性をサポートする」といった表現。これまでに発表されてきたＵＣ‐Ⅱの有効性を示す査読付きＲＣＴ論文は10報近い一方で、変形性関節症患者など病者を被験者にしたものが大半。ただ、中には健常者を対象にしたものもあり、今回のＳＲではこれが採用された。

　他方、パン酵母由来βグルカンのＳＲでは「肉体的・精神的な疲れを緩和する」、あるいは「ストレスを緩和する」といった機能性をそれぞれ検証。同成分を使った健常者対象の査読付きＲＣＴ論文のほとんどがウェルミューンによるもので、このうち6報、4報が今回のＳＲでそれぞれ採用された。いずれの機能性についても効果があると言える結果だったという。

　原料供給先各社への届出サポートでは安全性に関する資料も提供していく方針だ。非変性Ⅱ型コラーゲンに関しては、日本国内での12年にわたる販売実績で喫食実績を説明するとともに、動物試験や、日本人を対象にした5倍量過剰摂取臨床試験による安全性試験データを用意。「両原料とも米国でＧＲＡＳ認可を受けている。安全性に関してはトクホに準じる形で検証されている」といい、原料供給先各社に今後提供していく資料の〝質〟に自信を見せている。