トクホ制度、健食広告など検討 消費者委専門調査会 (2015.8.6)
特定保健用食品(トクホ)を含む健康食品全般の表示・広告や、トクホの制度や運用のあり方を検討する、消費者委員会の「特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会」(寺本民生座長・帝京大学臨床研究センター長)の初会合が5日開催され、来年3月に予定する報告書とりまとめに向け議論がスタートした。機能性表示食品が誕生し、トクホとの違いや住み分けが消費者に分かりにくいとの指摘や、過度な表示や広告に対する不信感を払しょくできるか、今後の議論の行方が注目される。
同調査会は、前段となった同委食品ワーキンググループの論点整理を受け、トクホを含めた表示・広告、トクホの制度及び運用、トクホの情報開示を中心に議論を進めていく。議論の流れによっては新たに審議が必要な項目が増える可能性も想定しており、来年3月の報告書とりまとめが遅れる可能性もある。
この日は審議の進め方やトクホ制度に関する確認が行われたほか、同委新開発食品調査部会委員で参考人として出席した板倉ゆか子氏(消費生活アナリスト)がトクホの表示・広告の問題点について意見した。板倉氏は「体脂肪を減らす」といった許可文言の一部を切り出し、キャッチフレーズのように表示することは、「消費者に過大な期待を与えてしまう」と苦言を呈し、消費者がトクホを適切に利用できるよう方策検討を求めた。
また、委員もプレゼンし、梅垣敬三座長代理(国立健康・栄養研究所情報センター長)は、トクホの利用実態から、消費者の一部はトクホを疾病の予防や治療など、薬の代わりとして利用していると指摘。トクホ本来の目的や効果的な利用方法が理解されていないと語った。迫和子委員(日本栄養士会専務理事)は、機能性表示食品の誕生でトクホとの境が曖昧になったと語り、条件付きトクホの廃止などトクホの高度化、差別化を図るべきと主張したほか、トクホの関与成分情報を含む健康食品の安全性・有効性について情報開示を義務化するよう求めた。
この日の議論では「消費者に正しい情報を伝え、それを消費者が理解し、行動を変えていくことが最も重要」など、情報提供の仕組みを整備する必要があるとの意見や、消費者庁をはじめ関係省庁の執行体制の整備を求める意見があった。
同調査会では先行して表示・広告を審議し、その後、トクホの制度や運用に関する審議に移るが、トクホの表示・広告に関しては、実際に消費者が表示・広告をどのように受け止めているかを調査する計画もあり、この調査の結果が判明した後に改めて議論する場を設ける。調査はトクホ利用者に限定してインターネットで行い、トクホの利用実感、利用方法、食生活状況、表示広告に関する意見について調査する予定という。
トクホ制度は1991年の創設から20年以上を経ており、この間、制度緩和や規格基準型や疾病リスク低減型など新類型の導入といった見直しが行われてきた。一方、最近の議論では「制度が現状に合っていない」「消費者の健康の維持・増進に役立っているのか」といった疑問が投げかけられている。さらに、許可の範囲を逸脱するような広告表現が同委の新開発食品調査部会で問題となったケースもあり、改めて議論の必要に迫られていた。
また、同委では更新制導入や再審査の迅速化について専門調査会を設置して議論し、報告書を取りまとめているが、更新制についてはその後議論された様子はなく店晒しになっている。同会終了後、寺本座長は本紙取材に対し、「審議するからには実効性のある方策をまとめたい」と語り、これら問題解決に意欲を示した。
【写真=寺本座長(8月5日、東京・千代田区)】