制度施行6カ月 課題多く(2015.10.8)


 機能性表示食品制度の施行から6カ月が経過した。届出件数は10月6日現在で101品目と100品目を超えてきた。少し気が早いかも知れないが、この半年を振り返りつつ今後を展望する。

 機能性表示食品の届出書類提出件数は8月後半に300件を超えていたことを踏まえると、届出受理総数100品という数字は物足りない。消費者庁は届出書類確認の体制を強化しているというが、受理スピードがあがった感はない。新制度を業界サイドから見た時の最大の課題の一つがこれだろう。受理の遅れは販売計画に多大な影響を及ぼす。「不利益を被っている」などとして7月頃には不満の声が多く聞かれていた。

 一方、消費者庁サイドからみると、届出書類の不備が多いという事情もある。このため同庁は6月、届出書作成に当たっての「留意事項」、9月には「確認事項」をそれぞれ作成し公表。確認事項の公表に当たり同庁担当官は「少しでも不備のない資料を作成し届出してほしい」と、弊紙取材に語っていた。

 受理スピードを向上させるには、同庁には書類確認体制の一層の強化、事業者においては不備のない書類作成がそれぞれ求められる。ただ、表示しょうとする機能性に対して同庁は、その細かな部分にわたり「確認」や「検討」を求めているとされる。そのため届出者からは「許認可制度化のような印象を受けた」などと制度の根幹に関わる疑問の声も挙がった。これが受理スピードの上がらない最大の要因とも考えられる。

 機能性表示食品の販売は6月中旬ごろから順次開始された。販売開始から間もないこともあって、各商品の売上動向の正確なところはまだ明らかになっていない。

 ただ、積極的な販売プロモーションもあり、売れ行き好調ぶりが伝えられていたファンケルの「えんきん」については、8月単月の売上高が計画比2.5倍、前年同月比5倍にのぼることを同社がこのほど弊紙取材に明らかにした。6月19日の販売開始以来9月30日までの累計出荷数は70万袋に達しており、年間売上高は30億円になる見通しだと言う。

 一方、この半年で社会的な注目を最も集めた機能性表示食品はリコムが届け出た「蹴脂粒」だろう。まもなく発売が予定されている同品は、その主張の是非はともかく、一部の消費者団体やマスメディアが新制度に不信感を抱くきっかけの一つになった。同時に、機能性表示食品と特定保健用食品はそれぞれ異なる制度であることを明確にさせる役割も果たした。発売開始後にまたぞろ反発の声があがるかもしれないが、トクホとの違いを消費者に理解してもらうための商品となることが期待される。

 この半年、届出情報が公開された機能性表示食品に対する消費者団体などからの疑問の声は予想以上に大きく、かつ強かった。インターネット上で糾弾される届出も見られ、この動きが届出に向けた事業者の取り組みを萎縮させてしまった面もあるだろう。そのため、届出情報を巡る議論は必要だとしても、その場としてインターネット上が相応しいのかという意見も出てきた。一方、だとすればどこで、どう議論すればいいのか。その妙案はいまのところ見つかっていない。

 食品の新たな機能性表示制度の検討会で積み残された検討課題の行方にしても、この半年では表立った進展は見せなかった。新制度の対象外とされている成分や素材の対象化、研究レビューでの病者論文の活用など、多くの健康食品を機能性表示食品に移行させていくために解決すべき課題が業界には多い。一方、制度施行後に消費者団体から指摘された新たな課題もあり、今後の議論次第では、業界にとっては逆に厳しい方向にガイドラインは修正される可能性もはらむ。

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