健食の過剰摂取など問題点を強調 食安委メッセージ(2015.12.10)

食品安全委員会

 食品安全委員会は8日、国民向けに特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品を含む健康食品の安全な利用を促すメッセージを公表した。メッセージは全部で19項目あり、科学的見地に基づき記述。健康食品の利用は個人の判断だが、食品であっても安全とは限らないこと、ビタミンやミネラルでは成分によっては過剰摂取のリスクがあること、信頼できる情報を基に自身の健康に役立つかを考えて選択するよう求めた。

 同委の「いわゆる『健康食品』に関する検討ワーキンググループ」(脇昌子座長・静岡市立静岡病院副院長)が検討し、先月取りまとめたもの。ほかにメッセージの要点を1枚にまとめたリーフレットも作成、公表した。

 特に錠剤・カプセルでは、体内に蓄積しやすい脂溶性ビタミン、微量栄養素のミネラルの一部で過剰摂取の恐れがあると指摘。さらに、欧州毒性学会(EUROTOX2013)において、欧米等の疫学調査で食事等で必要な栄養素が充足している国では、サプリメント等からの必要量以上の栄養素の補給は健康にプラスの作用をもたらさなくなってきていることが示唆されるとの講演が行われたことを記載。健康被害事例や学術情報を列挙し、暗にこれら栄養素のサプリメントからの摂取は不要であることを臭わせた。

 ダイエットや筋力増強をうたう食品も効果が実証されているものはほとんどないとしたほか、食べて痩せる食品は栄養状態を低下させる有害物と、安全性に疑問を呈した。

 品質については、医薬品を持ち出して医薬品並みの品質管理がなされていないと指摘。成分が一定量に調整されていない可能性や、消化管で溶けて吸収されるように作られていない製品の事例があるとした。一方で自主的に取組む健康食品GMPについては品質判断の参考にすることができるとした。

 健康食品に関する情報についても、体験談や特定の研究者だけが主張している場合は安全性・有効性を示す根拠にならないこと、情報は信頼できる情報源から得ることを勧め、例として厚生労働省や同委の健康被害情報、医薬基盤・健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」を挙げた。

 今回のメッセージは、同委自らが行う食品健康影響評価の案件候補の募集で健康食品の安全性が上り、その後、同委企画等専門調査会で、留意点などを整理して同委の見解を取りまとめるとともに、広く情報発信を行うべきとの審議結果が取りまとめられたことを受けたもの。一方で、4月には事業者責任で食品に機能を表示する機能性表示食品制度がスタートしたこと、今春には同委の審査で安全性確認ができなかったトクホ申請品と成分が同一の商品が機能性表示食品として届出受理されるなど、健康食品の安全な摂取を啓発する上では時宜を得ていたといえる。

 8日の会見で佐藤委員長は、既に多くの知見が集まっているビタミンやミネラルの過剰摂取による健康被害を例に「過剰摂取はまずいよといった科学的なメッセージは、国の制度がどうあろうと出し続けていくのが食品安全委員会の立ち位置」と、制度に係らず科学的知見に基づく見解をまとめた同委の姿勢に理解を求めるとともに、「健康に良いという報告は目に入りやすいが、健康被害の情報は目に触れにくい」とも述べ、健康食品の安全性に着目した今回のメッセージの重要性を強調した。

【写真=委員会終了後の会見でメッセージの内容を説明する佐藤委員長(12月8日、東京・港区)】

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