対象拡充で品質高まる 消費者庁検討会で業界主張(2016.3.24)
消費者庁「機能性関与成分検討会」第3回会合が15日にあり、検討会に委員として参加する事業者団体4団体に対するヒアリングが行われた。検討会前半戦の「天王山」とも目されたこの日の会合で4団体は、機能性関与成分の対象拡充を推進する方向で意見が統一。機能性関与成分が明確でないものに関しては、より厳格な製造・品質管理体制の導入を対象化の要件に掲げた。また、健康食品産業協議会と日本通信販売協会では対象拡充の意義に対する見解も一致。いわゆる健康食品を減らし、機能性表示食品を増やすためだとする。
「いわゆる健食縮小へ」
栄養成分や、機能性関与成分が明確でないものを、機能性表示食品制度の対象にする意義、必要性とはなにか──前回会合の「論点整理」で消費者庁が第一の論点として掲げたこの問いに対し、健康食品産業協議会と日本通信販売協会がそれぞれ用意した答えは重なる。平たくいえば「いわゆる健康食品を市場から減らすため」だ。
まず通販協。市場には現在およそ10万品目の健康食品が溢れる一方、機能性表示食品の届出はわずか235品目(3月11日現在)にとどまるとした上で、「大きなシェアを持つビタミン・ミネラル、機能性関与成分を特定しにくい成分を制度に取り込むことで、透明化を図る」などと対象拡充の意義を力説。「健康食品をすべて機能性表示食品に」シフトさせたいとした。
一方の産業協議会は、「この制度には、一定の機能性を持つ商品すべてが安全性・機能性情報を消費者に提供できる事が重要で、この情報提供によりイメージでなく合理的な商品選択を可能にする」と制度に対する考え方を提示。その上で、情報提供が許されないためにイメージを訴求せざるを得ない健康食品から、情報提供が可能な機能性表示食品への切り替えを進める必要があるとした。
さらに機能性関与成分が明確でないものについては、「科学的根拠を有する製品・素材はすべて制度に引き上げられるような道筋を作り、玉石混交、かつ暗示的広告を展開する〝いわゆる健康食品〟は縮小する流れに方向づけるべき」だと提言。これにより現在市場に存在する商品の品質向上や経済活性にもつながるとした上で、市場の過半数を占めると推測されるこれら食品・素材を制度対象に加えなければ、市場状況は変わらないままだと訴えた。
寺本民生座長(帝京大学臨床センター長)は通販協の主張を、「逆にいえば、(いわゆる)健康食品をなくす方向に持って行こうということ」だと受け止める。一方、消費者団体代表などほかの委員は意見を特段述べておらず、意義や必要性に関する議論が深まったとは言えない。ただ、いわゆる健康食品の縮小は、消費者団体サイドの以前からの要求でもあり、業界サイドが示した「身を切る」姿勢に反論できる委員は恐らくいないと考えられる。
産業協議会 拡充向け具体案提示 栄養成分表示 既存制度と差別化
この日、各団体の持ち時間は、ヒアリング20分、質疑10分の計30分だった。その中で産業協議会は、ビタミンや漢方生薬に関する識者など計4名もの説明者を揃えたこともあり、消化不良に終わったと言える。ビタミンの過剰摂取に対する注意喚起などを行った食品安全委員会の「いわゆる健康食品に関するメッセージ」に対する反論に時間を使い過ぎ、質疑の時間も省略されてしまったのは失策だったに違いない。
だが、ヒアリングではほとんど説明されなかったが、産業協議会は、制度に対する考え方から栄養成分、機能性関与成分が明確でないものを制度対象とする際の具体的な方法まで、提出資料で詳しく提示していた。昨年6月、「安全性・GMP」「機能性評価」「機能性成分規定」「表示・広告自主基準」といった4分科会で構成する専門部会を立ち上げ、本検討会における二つの検討課題を含め、制度を取り巻く課題への対応策の検討を進めていたためだ。
提出資料では、安全性確保の「考え方と具体的方法」として、栄養成分について、食事摂取基準で耐用上限量(UL)が規定されている栄養成分に関しては配合量をそれ以下とし、ULに対する摂取目安量を表示することで過剰摂取を回避する方策を提示。また、その機能性表示に関しては、栄養機能食品のほか医薬部外品、OTC医薬品とは異なる表示を行うことで、既存制度との差別化を図るあり方を提案している。
関与成分不明確 GMP必要で意見一致
一方、機能性関与成分が不明確なものについては、漢方生薬の品質管理手法を参考にした規格設定を行うことで同等性を保証する仕組みを構築したり、原料GMPも含む形の製造・品質管理を義務づける方向性を検討したりした上での制度対象化を提言するなどしている。
機能性関与成分が明確でないものに関し、GMPによる製造・品質管理を採り入れることで制度対象に加えようとする方向性は、産業協議会のほか、通販協、日本OTC医薬品協会の3団体で一致している。日本チェーンドラッグストア協会も、制度全体に関する話と見られるが、「近い将来には(GMPを)義務化していただきたい」と今後の検討を要望。GMPの必要性に言及している点では、今回ヒアリングが行われた4団体すべてに共通する。
このうち通販協では、機能性関与成分が明確でないものを制度対象に加える要件として、①機能性のエビデンスがある②安全性の確認ができている③作用機序が解明されている④原料の成分組成が確認できている──といった4つの項目を示した上で、原材料を加工し原料化するまでの「製造工程管理が重要になる」(通販協サプリメント部会・寺本祐之氏=ファンケル総合研究所サプリメント研究所所長)として、原料GMPに基づく製造・品質管理の必要性を強く主張した。
ただ、前回の会合で機能性関与成分が明確でないものは漢方生薬に準じた「3つのクラス」に分けて議論を進める方法を提示していた合田幸広委員(国立医薬品食品衛生研究所薬品部長)は今回、「関与成分が明確でないものは専門性の高い領域。それに対して届出制でよいのか」と新たな見解を示した。そうした食品や原料の機能性などは本来「プロ」が判断すべきとの主旨だ。従来にも増して徹底した製造・品質管理の導入を業界は今回提案した一方で、各論を議論していく今後の検討会会合に向け、新たな火種を抱えたと言える。