オムニカ 植物エキス新工場を竣工 静岡に11月 (2018.2.22)


 サプリメント原材料メーカーのオムニカが植物抽出物の製造工場を静岡県裾野市に竣工させる。稼働開始は今年11月から年末の予定で、機能性表示食品制度に対応する新製品のほか主力製品の一部を既存工場から移管して製造する計画。臨床試験で確認された有効性や安全性を全ての製造ロットに再現させるため、天然由来抽出物では製造時に発生しがちな規格誤差を緻密に制御できるプラントを設計した。投資額は非公表だが、土地購入費用を含めて40~50億円と推測される。

製造パラメータを緻密に制御
 同社の高尾久貴社長が13日、取材に応じた。新工場の建設地は、静岡県裾野市の今里工業用地で、敷地面積は約1万2800平方㍍。同用地は県の「内陸フロンティア推進区域」に指定されており、東名高速道路裾野インターチェンジから約2㌔の位置にある。昨年3月に市と売買契約を結んでいた。

 新工場の竣工準備に着手したのは4年前。工場およびプラントの設計・建設は、ゼネコン大手の清水建設が担当する。プラントは、「植物エキス製造所としては前例を見ない精密な技術装置」(高尾社長)を選定して設備全体を設計。これにより、植物抽出物の品質管理に求められる反応速度や均一化などの製造パラメータを精密にコントロールすることで、製造ロットごとの含有成分量の微妙なバラつきなど、規格誤差を緻密に制御できるようにする。

 プラントの製造能力については「抽出溶液の処理量として1日あたり200㌧」(同)。具体的には、「あくまでも例えば」として主力製品のビリベリー果実エキスを引き合いに出し、それのみを製造した場合で「月間10㌧換算」と言う。

 生産品目など具体的な製造計画については「現在検討中」(同)としている。そのため新工場の製造能力は、実際の製造計画とは無関係にイメージするほかないが、分かりやすくするためビルベリー果実エキスを想定すると、その国内年間流通量に相当するキャパシティを具備させたことになる。サプリメント向けの植物抽出物プラントとしては異例の規模になりそうだ。

 「実際に臨床試験で評価された性能を再現させ、それを消費者に利用してもらう。それが健康食品に対する様ざまな疑念を払拭させる唯一の方法だ」と高尾社長。「天然物ゆえに許されてきた曖昧さを無くす」とも語っており、従来にない高度なレベルでの品質管を可能にする最新鋭のサプリメント植物エキス工場が日本に誕生することになる。

 同社は2002年に東京で設立。新工場は、板橋工場(健康食品GMP=JIHFS)、舟渡工場(原材料GMP=日健栄協)に続く3番目の国内生産拠点になる。

 ビルベリー由来アントシアニンやルテインなど、機能性表示食品の機能性関与成分にもなる植物エキスの開発、製造販売を手掛けている。有効性・安全性を検証する臨床試験も数多く実施しており、論文投稿数も多い。また、機能性関与成分など有効成分の分析評価や、最終製品の体内動態確認試験を実施できる体制も社内で構築している。新工場の竣工に伴い、臨床試験、分析試験、そして製造といった、有効性・安全性を担保した原材料を提供していくために求められる3つの軸を、これまで以上に効果的に回していくことが可能になりそうだ。

「天然ゆえの曖昧さを排除」
 【オムニカ高尾社長の話】 天然原料を由来とするエキス製品は、これまで天然であるが故の曖昧さが許容されてきたように思う。裾野工場(新工場)は、そうした曖昧さの排除を目標にしている。目標を実現させるために、現在考えられ得る最大の制御と、緻密な製造が可能なプラントを設計した。天然であることを言い訳にしない。「緻密さ」に関しては世界にも類を見ない植物エキス製造工場になる。

 健康食品の原材料にはビタミンCのような栄養成分もある。だが、そうではないエキスのほうが多い。だから曖昧さに目をつぶったままではいけない。治験結果や論文で書かれていることの再現性が保証されているとは言えない健康食品を、消費者が実際に手に取ることになる。

 新工場の着工を決めたのは2015年末。機能性表示食品制度の創設が決まったことが、新工場を構想するきっかけとなった。具体的な製造品目は現在検討中だが、原則として、機能性表示食品の機能性関与成分を対象にしたい。

 裾野工場の目的は、臨床試験で有効性、安全性が評価されたエキスと真の意味で同等のエキスを消費者の手元に届けることにある。我々にはそれをする責任がある。「真の意味で」というのは、機能性関与成分など特定の成分が同等かどうかということではなく、エキス全体として同等であるということ。治験結果の再現性を保証するためには、エキスの場合、全体として同等であることが求められる。

 日本の健康食品産業は、高齢化と国際化をキーワードとして、国内、海外の双方でまだまだ成長の余地がある。その中で、裾野工場を健康食品産業の正しい発展のための橋頭保にさせたい。優秀な若い人材が、健康食品産業に従事することは人に役立つことだと感じてもらったり、自分の将来を賭けてみても悪くはないと考えてくれたりするようになって欲しいという思いもある。


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