三生医薬 ソフトカプセル新工場を竣工 (2018.5.24)

三生医薬合体①-6 三生医薬合体②-1

 健康食品受託製造大手の三生医薬は16日、昨年5月から建設を進めていたソフトカプセル製剤工場「南陵工場」(静岡県富士宮市)を竣工した。主要受託生産品目であるゼラチンソフトカプセルの生産能力を従来比1.5倍、生産性は約3割高め、年産およそ30億粒のキャパシティを誇る基幹生産拠点として運用していく。健康食品ソフトカプセル製造工場としては、国内最大規模の生産能力を保有することになるようだ。投資金額は約70億円という。

松村CEO 「生産を売る工場へ」
 同日、富士宮市長の須藤秀忠氏らの来賓や、取引先などを招き、南陵工場内で竣工式を開いた。
 竣工パーティの冒頭で挨拶に立った松村誠一郎代表取締役会長兼CEOは、南陵工場について、「三生医薬にとって大きなマイルストーン。物を売る工場から生産を売る工場へ。そのような大きな変革をドライブする工場になる」と述べ、同社の成長戦略においても重要な生産拠点となることを示唆。受託製造したソフトカプセルを顧客へ単に売るのではなく、研究開発を起点に製造から出荷までの「生産プロセス全体」を付加価値として提供していく最新鋭工場になると語った。

 翌17日に稼働した。南陵工場ではゼラチンソフトカプセルのほか植物性ソフトカプセルを生産する。植物性ソフトカプセルについては、生産量を従来比およそ3倍に高めたという。

 工場の概要は、敷地面積3万3000平方㍍、延べ床面積1万700平方㍍の鉄骨2階建て4層構造。上から下へ生産工程が進む設計とし、工場従業員の作業負担を軽減できるようにした。同社は1993年の会社設立以来、これまでに大岩▽久沢▽万野▽大渕▽厚原の計5工場を竣工させてきたが、過去最大の規模となる。

 場所は、富士宮市の「富士山南陵工業団地」で、新東名高速道路の新富士インターチェンジから車で約15分の距離。同社は16年1月、同団地内に約1万坪の土地を購入し、昨年5月から工場建設を進めていた。土地には未使用部分を多く残してあり、将来的には、工場を拡張、あるいは新設するなどし、ソフトカプセル以外の製剤の生産拠点として活用する可能性もあるようだ。

 南陵工場の竣工に伴い、おもにゼラチンソフトカプセルを製造する大岩工場、植物性ソフトカプセルを製造する万野工場は、今冬までに南陵工場に集約させる形で閉鎖する計画。これにより同社の主要生産拠点は南陵、厚原、大渕、久沢の4カ所となる。

 同社の売上高は、公表情報によると210億円(2016年度)。14年に投資ファンドのカーライル・グループ傘下に入り、外部人材も積極的に登用しながら、国内のみならず海外からの受注拡大を進めている。今年1月には、健康食品・サプリメントの輸出に関してマレーシア企業と提携したことが、日本経済新聞などに報じられた。

 その中で竣工させた大規模キャパシティを誇る最新鋭ソフトカプセル工場。工場の稼働率を高めるには、国内外からのさらなる受注増が必須といえそうだ。ここ数年で研究開発に力を入れているホヤ由来プラズマローゲンなど同社独自の機能性食品原材料もテコに、南陵工場を通じて付加価値を提供していけるかどうかが鍵になる。

基幹工場南陵で社是実現へ 「最先端の製剤技術」など提供
 三生医薬の四條和洋代表取締役社長兼品質保証本部長と、山田和永専務執行役員兼CMO生産本部長は16日、南陵工場内で健康産業流通新聞の取材に応じた。主なやり取りは以下の通り。

──南陵工場の位置付けは。
 四條 メイン工場。これまでゼラチンソフトカプセルは大岩工場、植物性ソフトカプセルは万野工場で生産してきたが、同2工場は閉鎖し南陵工場に集約させる。受注増にあるが、老朽化も進んできた(大岩工場竣工は2000年、万野は05年)。そのため新工場の建設を決めた。
 山田 当社は工場が点在するようなロケーションだったが、大きなフットプリント(生産拠点)ができた。それに、まだまだ拡張できる余地も残してある。南陵工場は購入した土地(約1万坪)の半分程度しか使用していない。今後に備えるためだ。
 四條 残りの土地をどのように活用するかはこれから。打錠や顆粒を増やすのか、それともシームレスカプセルを増やすのか。そうしたことは今後の需要も見ながら慎重に検討していく。

──南陵工場のソフトカプセル生産能力は従来比1.5倍とのこと。具体的には。
 山田 従来の年間生産能力はおよそ20億粒。それが30億粒になる。最新設備を導入するなどして、生産能力と生産性を同時に高めた。
 自社調べだが、健康食品のソフトカプセル生産工場としては現在のところ国内最大の生産キャパシティを誇る。加えて、需要に応じてさらに生産能力を上げることもできる。拡張性を残したのは土地だけでなく工場も同じ。あらかじめ今後のライン増設を視野に入れた設計になっている。
 四條 これまで以上の大ロット生産に対応できるようになった。と同時に、引き続き小ロット生産にも対応する。南陵工場に導入した充填機等の設備は、大ロットから小ロットまでカバーできる。

──GMPなど認証関係はどうする。
 四條 日健栄協のGMP認証を取得する。また、NSFのcGMP施設登録の準備も進めている。大渕工場、厚原工場が登録されているが、南陵工場も同様にし、米国を中心とした海外企業のニーズに応える。また、メイド・イン・ジャパン健康食品を製造できる最新工場であるという点で、アジア市場にもアピールできると考えている。

──ソフトカプセルの品質管理能力も高めたとのことだが。
 四條 自動外観検査器を導入するなど、生産ラインも含めて自動化できる部分は可能な限り自動化した。ヒューマンエラーを防ぐシステムの工場にしたということ。品質管理チームも南陵工場に常駐する。
 山田 自動化に関しては既存工場と比べると大幅に進んだ。機器類だけでなく、生産工程における煩雑さを解消しタッチポイントを減らすなど、仕組みとしての自動化も進めている。また、エルゴノミクス(人間工学)も考慮された工場になっている。工場従業員の負担を減らすためだ。

 例えば、これまで持ち上げて横から入れる必要があったものを、持ち上げずに上から入れられるようにしたり、歩く距離を極力減らすレイアウトにしたり。このように南陵工場には最新のテクノロジーを導入した。社是に掲げている「最先端の製剤技術」「絶対の品質」「信頼される製品」の提供を、より良く実現する方向に我々は向かっている。

【写真左=上:竣工パーティで挨拶する松村誠一郎 代表取締役会長 兼CEO 
       下:富士山をのぞむ南陵工場の外観。17日に稼働した(三生医薬提供)】

【写真右=右:四條和洋 代表取締役社長 兼品質保証本部長
       左:山田和永 専務執行役員 兼CMO生産本部長】

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