機能性表示食品 消費者の理解 道半ば 食品表示めぐる消費者意向調査
(2018.6.7)


 機能性表示食品は「事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示したものである」と正しく認識していた人は15.3%にとどまる──消費者庁が昨年度の委託事業で行った食品表示に関する消費者意向調査で、こんな結果が出た。「国が審査を行っている」や「製品にマークが表示されている」といった誤った答えを選択した人はそれぞれ19%、12.5%に上る。消費者に機能性表示食品制度の正しい理解が広がっていないことが窺われる。

 この調査は、食品表示制度に対する消費者の理解度を調べる目的で、消費者庁が委託調査事業として昨年度実施したもの。受託したのはマーケティングリサーチ会社のオノフ(東京都渋谷区)で、今年1月から2月にかけ、全国の満15歳以上の一般消費者を対象にインターネットアンケートを実施。有効回答1万1千件余りから無作為で1万サンプルを抽出した。

 消費者庁が5月31日公表した調査報告書によると、「保健機能食品を知っていますか」の設問では、「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」が60.7%で最多。「どのようなものか知っている」は全体で17.6%にとどまった。

 また、保健機能食品を構成する栄養機能食品(栄機)、特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品(機能性)の認知を尋ねたところ、いずれも「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」が60%以上で最多。トクホについて「どのようなものか知っている」と答えた割合は29.6%と約3割に達したが、機能性と栄機はともに15%台にとどまった。

 機能性について「どのようなものか知っている」と回答した人の割合を性年代別にみると、最多は10代男性で20.4%。機能性はより若い世代に認知されている傾向がみられ、10代女性でも19.2%と、50代女性の19%を上回った。逆に最少は70代以上男性で11.8%。一方で70代女性は19.3%と割合が高く、機能性の認知は女性のほうが高い傾向がみられた。

 一方で、消費者は各制度を理解していない様子も窺われる。トクホの説明について正しい選択肢(表示されている効果や安全性について国が審査を行っている)を選んだ人は32.2%と約3割にとどまった。「事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示したもの」を選んだ機能性と混同しているとみられる人は10%に達した。「分からない」と答えた人は36.3%だった。

 機能性や栄機についても同様の傾向がみられ、機能性について「国が審査する」の誤った選択肢を選んだ人は19%と、正しい選択肢を選んだ人(15.3%)よりも割合が高かった。「分からない」は43.5%とおよそ半数に達した。

 栄機はさらに深刻で、正しい選択肢「既に科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含んでいれば、届出をしなくてもよい」を選んだ人は8.1%と一ケタ台にとどまったうえ、「国が審査する」を選んだ人は16.6%と、栄機でさえトクホと混同している消費者が少なくないことが窺われる結果だった。「分からない」は43.4%だった。

「今後摂取したい」37% トクホは28%
 調査では保健機能食品の摂取状況も尋ねた。トクホについては「現在摂取している」が15.2%、「以前摂取していたが今は摂取していない」が25.5%と、合わせて4割に摂取経験があった。栄機については「現在摂取」が9.8%、「以前摂取」が16.9%と合わせて2割台にとどまった。

 一方、機能性については「現在摂取」が9.9%、「以前摂取」が15%と、栄機とほぼ同じ水準。ただ、今後の摂取意向を示唆する「摂取したことはないが、今後摂取してみたい」は36.8%と、トクホ(27.5%)や栄機(35.2%)よりも割合が高かった。

 しかし、「これまでに摂取したことはなく、今後摂取する予定もない」と答えた人も少なくなく、トクホが31.8%、栄機が38.1%、機能性が38.3%──と全ての保健機能食品で3割台に及ぶ結果となった。

 他方で、保健機能食品の購入にあたっては、ヘルスクレームを重視している傾向が窺われる。
 「あなたは、食品の購入時などふだんの食生活において、トクホのどの表示を参考にしていますか」と複数回答で尋ねた設問の最多回答は「(おなかの調子を整えるなど)保健の機能の表示」で、34.3%だった。「関与成分名」については11.2%となり、「栄養成分表示」の20.3%を大きく下回った。ちなみに、「表示は確認していない(参考にしていない)」は39.7%。

 この回答傾向は他の保健機能食品でも見られ、同様のことを機能性について尋ねた設問では、「機能性の表示」が32.9%で最多。機能性関与成分名」は13.1%で、「栄養成分表示」の20.1%を下回った。「表示は確認していない」は41.6%。「確認していない」の回答率が高い点は気懸りだが、消費者は成分名よりもヘルスクレームで購入商品を選ぶ傾向が強いといえそうだ。

 またこの調査では、消費者庁としても頭が痛いであろう結果が出ている。
 「あなたは機能性表示食品の届出情報について、消費者庁ウェブサイトで確認できることを知っていますか」と尋ねた質問に「いいえ」と答えた人が88.2%と実に9割近くに達したからだ。

 また、「はい」と答えた1100名余りに対し、実際に確認したことがあるかを尋ねる設問でも、「はい」と答えた人は41.7%と半数以下にとどまり、少なくとも消費者は届出データベースをあまり利用していない状況が示唆される結果となった。

 さらに、実際に確認したことがあると答えた人を性年代別でみると、70代以上男性が51%と比較的高い割合であったものの、50代~70代以上の女性では2割台と、健康食品の主要ユーザーである中高齢世代女性の利用率は低い傾向が見られた。

 ただ、実際に届出情報を確認した人にどの情報を確認したかを尋ねたところ、「安全性の評価」が55.1%で最多となり、この点に関しては消費者庁の狙い通りといえそうだ。次いで、「科学的根拠などに関する基本情報」が44.3%、「生産・製造及び品質の管理」が28.9%で続いた。

 また、届出情報を確認した理由を尋ねたところ、「味噌で機能性表示食品があるかどうか知りたかったから」「実験に参加した人数を知りたかったから」「関節に効く成分が多くてどれが自分に合っているか知りたかったから」「体調に異変を感じたことがあり、実際の公表を調べる手がかりが知りたかったから」──などといった回答が寄せられたという。

 報告書によると、今後この調査結果を分析し、「食品表示法の関係法令やガイドライン等の定着状況を把握するとともに、消費者の食品表示に対するニーズを把握し、食品表示制度の見直しに役立てる」という。

 なお、この調査では保健機能食品以外の領域についても広範に調べており、報告書では、栄養表示▽アレルゲン表示▽原材料・添加物表示▽製造所固有記号──などの理解・活用状況に関する調査結果も示している。




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