改正食衛法 健食の安全性確保 (2018.6.21)
13日に公布された改正食品衛生法。プエラリア・ミリフィカの健康被害問題が引き金となり、昨年の法改正懇談会の段階から議論が熱を帯びていた健康食品の安全性確保対策を巡っては、「特別の注意を要する成分等」(以下、指定成分)を含む食品について、企業からの健康被害情報の届出を義務化する条文が盛り込まれた。これにより、健康被害を未然に防ぐための行政の情報収集体制に法的・制度的基盤が構築される。所管する厚生労働省は今後どのようなルールをつくるのか。担当する医薬・生活衛生局食品基準審査課の関野秀人課長(=写真)に話を聞いた。
──施行は今後2年以内ということですが、今後のスケジュールについて。
「施行期日を定めるための政令や、厚生労働省省令などの検討作業を今後本格化させる。その中で指定成分を含む食品の健康被害情報の届出については、どのような範囲の健康被害情報を、どのような方法で届け出てもらうのかなど、関係事業者団体との協議を重ねつつ、そうした具体的な中身を詰めていく。
また、法律上の改正項目ではないが、指定成分を含む食品に関する適正な製造・品質管理を告示で求める。これは昨年の懇談会でも必要性が指摘されていたもので、製造管理と原材料・製品の安全性や品質確保を制度化する。成分含量にバラつきのない食品を製造してもらうことが大切で、そうした製造・品質管理の具体的なルール、製品化の各工程で何をどのように守ってもらうのかなどを、これから具体化していくことになる」
──告示について。いわゆる「平成17年通知」(錠剤、カプセル状等食品の〝適正な製造に係る基本的考え方〟および同〝原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン〟)を見直したうえで告示に引き上げるというイメージ?
「その通知をたたき台にして検討するのもひとつの方法だと思っている。一方で、指定成分以外のものについてどうするのかという問題もある。17年通知はいわゆる健康食品全体を広くカバーしており、指定成分を含むか否かにかかわらず、品質のばらつきが許されるということではないと考えるならば、指定成分を含む食品とそれ以外の両方に求められる内容にすることを意識している。それぞれに多少の違いを持たせるべきか、それとも同じでいいのか、といったあたりはこれから検討する」
──平成17年通知は健康食品の安全性を確保する観点から、各企業が自主的に、GMPに基づく製造管理を行うよう求めたものです。すると今後、指定成分を含む食品に関しては、GMPの実質的な義務化を求めることになるのでしょうか。
「製造管理と原材料・製品の安全性や品質の確保を制度上、求めることになる。求める内容については、今後の議論ではあるが、『GMP』と言うとどうしても医薬品GMPをイメージしてしまうので、いわゆる健康食品、あるいは指定成分を含む食品の適切な製造管理等に対して、適切でかつ実効性の伴うルールにするために中身から入っていきたい。そのため産業界とも十分話し合いながら考えていく」
──告示は健康食品事業者全体に影響を与えそうです。発出の時期について目途は。
「現段階では『できる限り早く』としか言えない。指定成分を含む食品であるかどうかにかかわらず、事業者側の準備、対応の時間を考慮しなければいけない。まさに実効性を確保するために、できるだけ施行期日よりも前倒しで、具体的な中身をアナウンスする必要があると考えている」
指定成分 情報把握する必要性
──では指定成分の公表時期についてはどうでしょう。
「そこは何とも言えない。指定するためにはその根拠が当然必要になる。指定する時期に遅滞なく取り組むということ」
──指定成分の検討対象となる成分の「例」を示しています。もう少し具体的に。
「具体例として示している、たとえばアルカロイドは、様ざまな天然物に含まれているので、単純に「アルカロイド」として指定することにはならないだろう。
また、指定するものは明らかな医薬品成分ではないし、現行の食衛法第6条(不衛生食品等の販売等の禁止)や第7条(新開発食品等の販売禁止)の規制対象になるような、健康被害が直ちに想定されるようなものでもない。
制度上の位置づけからみると、製品や原材料の製造や品質の管理を求めるとともに、行政として健康被害情報を適切に把握する必要があるものが指定されるという言い方もできる。そうした成分に該当するかどうかを単純に言い表すのは難しく、指定する際は、対象製品が過不足なく対象となるよう、適切に成分等を表記して指定を行う」
──疑問に思うのは、指定成分にするかどうかの検討を始める契機についてです。プエラリアのように健康被害情報が増加傾向にあったような場合は別にして、そうした情報がない段階で、特別の注意を要する成分の候補をどうピックアップしていくのでしょうか。
「そこも産業界などとの話し合いが必要だが、様ざまな方法があると思う。国内外の文献などを集めるか、あるいは成分そのものが持つ作用を明らかにした研究報告など、検討を始めるべき契機はその都度あると考えている。
改めて言うと、指定するのは『特別の注意を必要とする成分等』。注意を要するから、今後の対応を検討するために必要な情報を収集する必要があるということになる。はじめから健康被害が明らかなものは、今でも6条、7条で対応できる」
──改正食衛法には附帯決議がつきました。健康食品に関しては広告表示も含めて適切な措置を検討するよう求められています。また、保健機能食品の製造・品質管理については消費者庁も検証していて、今後、同庁との連携も必要になりそうです。
「健康被害情報の収集や製造管理等の部分も含めて、関わり合いを持っていくことになるだろう。附帯決議も踏まえて、制度運用に必要な事項を具体化していく」(聞き手=本紙記者・和田肇/石川太郎。15日午前、厚労省内にて)
【写真=医薬・生活衛生局食品基準審査課:関野秀人課長】