打消し表示 見落とす実態にエビデンス (2018.6.21)

打消し表示_消費者庁が「視線」調査①

 広告の「打消し表示」に対する包囲網が一段と狭まってきた。消費者庁は新たな実態調査を行い、7日に報告書を公表。昨年7月、今年5月に続く今回の報告書では、人の視線の動きから、どこをどれだけの時間見ているかを定量的に計測できるアイトラッキング機器を使った検証結果を報告。打消し表示を強調表示に隣接した場所に表示していたとしても、文字が小さく目立たない場合、消費者は打消し表示を見落とす場合が多い実態を科学的に明らかにしている。

 「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」で示した。昨年7月の「打消し表示に関する実態調査報告書」、今年5月の「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態報告書」に続くもの。今回は動画広告、紙面広告、スマートフォンのウェブ広告について、消費者が打消し表示を認識できないため景品表示法上問題となるおそれのある事例を示している。

 今回はアイトラッキング機器を導入したうえでインタビュー調査を実施したのが特徴。昨年7月の実態調査は調査対象者の〝主観〟に頼ったものだったが、今回は客観的、科学的に打消し表示が見落とされがちな実態に迫った。いわば〝エビデンス〟といえそうだ。ただ、調査対象者は動画など3つの広告媒体(各3点)ごとに15名ずつと決して多くはない。調査時間も、聞き取りを含めて1名あたり40分程度という。

 今回も調査に使った広告表示例に健康食品のダミー広告を盛り込んだ。紙面広告とウェブ広告について1点ずつの計2点を用意。紙面広告については、前回調査では「体験談」の打消し表示について調べていたが、今回は、口に合わない場合の「全額返金」および初回限定の「お試し価格」を調べた。

 このダミー広告では、打消し表示が強調表示から離れている場合と隣接している場合の2パターンを用意。隣接する形で表示していても、「強調表示よりも著しく小さな文字」「強調表示と違う字体や色」「背景が強調表示の背景と異なる」といった場合は、消費者が強調表示と打消し表示を一体的に認識できないため、景表法上問題となるおそれがあるとした。

 一方、このダミー広告では消費者に認識される打消し表示も同時に例示している(=画像)。「通常価格 1箱9000円→4800円」の強調表示の真上に「初めてご購入の方に限り1箱で」の打消し表示を適度な文字バランスで一体化させる形で表示した場合、「強調表示に注意を向けていた可能性の高い者(3人)全員が、打消し表示の内容を認識していた」という。打消し表示の表示方法に関する一定の指針にされそうだ。

 消費者庁は昨年5月の報告書公表以降、7つの措置命令事案(一斉処分事案は1つにカウント)について打消し表示に対する評価を行っている。また、今月7日には、計3回の実態調査を踏まえた「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」も公表した。今後、打消し表示への規制をさらに強化すると見て間違いなさそうだ。

【イラスト=「通常価格 1箱9000円→4800円」が強調表示、「初めてご購入の方に限り1箱で」が打消し表示。報告書より引用】




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