景表法違反 措置命令と課徴金 同時に (2018.6.21)
健康食品などについて合理的根拠なく著しい痩身効果を得られるかのように表示していたのは景品表示法違反にあたるとして、消費者庁は15日、大阪市北区の通販会社に対し、再発防止を求める措置命令と課徴金納付命令を同時に下し、発表した。違反行為として優良誤認の他に価格表示に関する有利誤認をそれぞれ認定。課徴金額は計2229万円に上る。処分された企業は明らかな虚偽表示を行いながら短期間のうちに大きく売り上げていた。
4カ月で売上3億円
発表によると、処分されたのは㈱ブレインハーツ(須野裕代表取締役)で、措置命令の対象は「グリーンシェイパー」「アストロンα」「スリムイブ」と称する食品3品のほか石けん1品、下着1品の計5品。食品の「グリーンシェイパー」では、「『痩せすぎ』の健康被害により機能性表示食品から除外された製品」などとする明らかな虚偽を表示していた。
違反対象表示の媒体は自社ウェブサイト。ただ、同庁は、対象商品の口コミやブログ記事を掲載することで当該自社ウェブサイトに誘導していたアフィリエイトサイトも問題視。違反認定こそ下さなかったものの、違反があった旨の消費者に対する周知徹底にあたっては、「アフィリエイトサイトからハイパーリンクにより自社ウェブサイトに遷移する動線も含める」ように命じた。
一方、課徴金対象としたのは「アストロン」を除く4商品。課徴金対象期間は、例えば、「グリーン」は2017年5月19日から同年9月22日までの約4カ月間と短い。それにもかかわらず同品の課徴金額は916万円に上る。課徴金額は売上に3%を乗じて算定されるため、この4カ月間だけで売上高は3億円余りに上ることになる。
他の3商品についても課徴金対象期間はおよそ1年程度と短く、同社はこの短期間のうちに4品合計で7億4000万円以上も売り上げていた。
消費者庁が報道発表した資料によると、同社は「グリーンシェイパー」の広告について、摂取2週間で内臓脂肪が平均28平方㌢減ったことを示す腹部脂肪面積の変化量グラフや、腹部CTスキャン画像なども掲載しつつ、「臨床試験済みサプリメント」などと表示していた。だが、同庁によると、同社は合理的根拠を示す資料を提出しなかったという。あらゆる表示が虚偽だった可能性も疑われそうだ。
また、同社は「通常価格」よりも大幅に割安な「限定特価」で購入できるように表示していたが、通常価格は同社が任意に設定したもの。通常価格での販売実績はなく、不当な二重価格表示を行っていたという。
17年度調査件数653件 調査の端緒 多くが「情報提供」
消費者庁による2017年度の景品表示法違反被疑事件の調査件数が、前年度からの繰り越し228件、新規425件を合わせて653件に上った。新規のうち323件が外部からの提供情報に基づき調査したもの。情報提供件数は1万1053件と1万件を超え、うち6割超の702件が食品表示に関するものだった。
同庁が15日に公表した「平成29年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組」で明かした。
調査の端緒は「情報提供」が最も多く、消費者庁による「職権探知」は93件、事業者からの「自主報告」は9件にとどまる。情報提供件数は増加傾向にあり、15年度以降初めて1万件を突破した。食品表示に関する情報提供件数の推移については触れていないが、増えている可能性がありそうだ。
17年度に調査した653件のうち「措置命令」を下したのは50件と16年度の27件から大幅に増加。このうち食品表示は19件で、商品役務分類別で最多となる。17年度は機能性表示食品の広告表示を巡り16社に一斉措置命令を下していた。
また、事業者名を公表しない「指導」については全体179件のうち5件が食品表示に関するものだった。
健康食品の広告表示を巡り同庁は、表示対策課食品表示対策室で景表法と健康増進法との一体的法執行を進めており、17年度は景表法に基づく措置命令を1件(飲料の痩身効果に関する不当表示)について実施。加えて、健康増進法第31条第1項(誇大表示の禁止)に違反するおそれの事案34件に対して指導を行った。さらに、17年度はインターネット上で特定保健用食品と機能性表示食品の虚偽・誇大広告の監視も実施した。
一方、課徴金納付命令については17社19件に対して行い、計3億9153億円の課徴金納付を命じた。
また、17年度は都道府県知事による措置命令件数も増加し、静岡2件に加え北海道・福岡・長野・兵庫・栃木、東京1件ずつの計8件と前年度の1件から大きく増えた。
【写真=処分会社が健康食品で行っていた表示の一部。「ハーフ50」は「体重が半分まで(※約30㌔㌘台まで)減少する恐れがあることを意味しています」と言う。消費者庁報道発表資料より引用】