厚労科研費研究報告書 健食広告、監視を提言 (2018.7.26)
昨年度の厚生労働省科学研究費補助金(厚労科研費)で健康食品広告を巡る研究が行われ、研究チームは報告書で、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき無許可医薬品として取り締まることも考慮すべきだと提言した。広告に誘発されて健康食品を使用した結果「健康被害を生じている事例があるのであれば」との前提条件を付けてはいる。ただ、健康食品の摂取で体調不良を感じたことのある人が一定の割合で存在しているとも指摘する。
この研究を行ったのは、帝京平成大学の白神誠・薬学部教授ら。厚労科研費(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)を活用し、一昨年度に引き続き実施した、「医薬品等の広告監視の適正化を図るための研究」の一環として新たに行ったもの。報告書のタイトルは、「医薬品医療機器等法の観点からの健康食品の広告監視の必要性」とされている。
報告書によれば、研究の目的は、「健康食品の有効性に関する広告の実態を把握するとともに、それが消費者に健康被害をもたらすことがあるのかどうか」を検証すること。健康食品や広告の専門家からも意見を聴取。研究班には消費者庁の食品表示調査官、国立健康・栄養研究所関係者、科学ジャーナリストらが加わった。
報告書では、健康食品の広告に対して厳しい見方を提示している。「一般用医薬品の広告が厳しく規制されている一方で健康食品の有効性に関する広告が比較的野放し」「医薬品に該当するおそれが十分にある」──などと指摘。加えて、こうした健康食品広告に対し、「一般用医薬品業界の不満がある」との記述もある。医薬品広告の監視指導の適正化を図る目的の研究を行う中で、そうした声が一般薬業界から上がっていることが、今回の有効性を謳う健康食品広告の検証につながったようだ。
研究チームは、消費者はインターネットを通じて健康食品の有効性に関する情報収集を行う場合が多いと見て、霊芝、アガリクス(報告書ではアガリスクと記載)、プロポリス、フコイダンなどといった成分名に加え「癌」を検索ワードにしてインターネット上を探索し、上位にあがったサイトの内容を検証した。
その結果、一部の例外を除き直接「癌」への効果を謳ったものは確認できなかったものの、ブログや研究会のようなサイトでは、癌への効果を「自由に記述している」と指摘。研究会に関しては、「実質的企業がスポンサーになっているものも見受けられる」とし、疑問を呈している。
研究チームはまた、健康食品による健康被害の実態と健康食品広告に対する認識を調べる一般消費者1000名対象のウェブ調査を実施。その結果について研究チームは、摂取している健康食品を知ったきっかけは「家族や知人に勧められたケースを除けば、ほとんどが企業による広告」と考察している。
また、「これまでに健康食品を利用して体調を崩した」と回答した人が全体で6.1%あったとし、「数が少ないにしても重大な健康被害を生じた例があることも事実」としたうえで、寄せられた回答の中には「肝機能障害」などの記載があったとした。ただ、因果関係を確認したかどうかについては触れていない。
また報告書では、健康食品の広告は景品表示法と健康増進法で規制されることにも言及。ただ、両法律は「健康保持増進効果を表示することそのものを禁止しているわけではない」とし、「そのために健康食品の広告では、医薬品の広告では好ましくないとされている医師等の推奨や使用者の経験談、利用者のアンケート結果などを駆使して消費者に利用を促している」と指摘。そのうえで次の通り結論付けた。
「企業の健康食品の有効性に関する広告に誘発されてその健康食品を使用し、結果として健康被害が生じている事例があるのであれば、薬機法の無許可医薬品として取締りを強化するべきではないかと考える」