健康食品広告 医療受ける機会「損なわせてないか」 (2018.8.9)
健康食品の広告監視に関する研究を行った白神誠・帝京平成大学薬学部教授が7月30日、本紙の取材に応じ、18年度も引き続き研究を進める計画を明かした。白神教授を代表者とする研究班は、医薬品医療機器等法(薬機法)の観点から健康食品の広告を調査している。注視しているのは、単に医薬品的な効能効果を標ぼうしているかどうかではなく、有効性を訴求する健康食品の広告を信用した消費者が、適正な医療を受ける機会を損なっている可能性だ。
この研究に関する報告書は、「医薬品医療機器等法の観点からの健康食品広告監視の必要性」と題して6月21日までに、厚労省の科学研究成果データベースなどを通じて公開されている(本紙973号既報)。
事例あれば「取締り必要」
白神教授らは報告書の中で、健康食品の広告について、「景品表示法と健康増進法により規制されるが、いずれも健康保持増進効果を表示することそのものを禁止しているわけではない」と規制の実態を説明。そのうえで、「有効性に関する広告に誘発されて健康食品を使用し、結果として健康被害を生じている事例があるのであれば、薬機法に基づき無許可医薬品として取り締まることも考慮すべきと考える」と結論付けている。
白神教授は取材に、報告書で言及した「広告に起因する健康被害」について、「広告を信用した結果、本来は医療を受ける必要があるのに受けないこと、あるいは、続けていた治療や服薬を止めてしまうことだ」と説明。健康食品広告に起因し、そのような健康被害の起こることが「一番の問題だ」と強調した。
この研究の目的は、そうした医療を受ける機会の損失が、健康食品の広告をきっかけに、実際に起こっているかどうかを把握することだ。「そうした事例が実際にあるようだとは聞くが、実態は定かでない。昨年度の調査では、その可能性を推測できる範囲にとどまった。今年度も引き続き調査し、実態を把握したい」と白神教授は話す。
法の目的改めて認知を
白神教授は、1977年に東京大学大学院薬学系研究科卒業後、旧厚生省に入省し、24年間勤務。研究者としては現在、製薬企業などの企業コンプライアンスも研究対象にしている。
白神教授は取材に、「法律にせよ、規制にせよ、取締りには目的がある。しかし、その目的が段々と忘れられ、ルールを守ること自体が目的になってしまうことが往々にしてある」と企業コンプライアンスの観点から問題点を指摘。そのうえで、旧薬事法や薬機法が健康食品の広告を規制する本来の目的は、「国民の健康を守ることだ」とし、「それを損なうような、治療の機会を逸してしまうような広告は、しっかり取り締まっていく必要がある」との考えを述べた。