「未来投資戦略2018」「統合イノベーション戦略」(2018.9.20)


 政府が今年6月に閣議決定した新たな成長戦略「未来投資戦略2018」、また、研究開発成果の実用化によるイノベーションを図るための戦略を盛り込んだ「統合イノベーション戦略」には、食による健康増進を推進していく方針がそれぞれ盛り込まれている。

 まず、未来投資戦略を見ると、掲げられた「バイオ・マテリアル革命」の中で、革新的バイオ技術の実用化を通じた「食による健康増進・未病社会」などの実現に向けた取り組みを推進するとした上で、トクホや機能性表示食品について「新たな表示を実現することを目指す」とある。新たな表示とは「免疫機能の改善などを通じた保健用途」。実現のために今年度よりエビデンスの蓄積を進めるとする。

 一方、統合イノベーション戦略でも食による健康増進はバイオテクノロジー戦略の中に盛り込まれている。マイクロバイオーム(微生物叢)を利用した新たな食品の開発などを主要施策の一つに盛り込んだ上で、研究開発成果を早期に社会実装するため、制度面の対応についても次の取り組みを進めるとする。

 「食品としての安全性は適切に確保する前提で、医食同源の思想に基づき、バイオテクノロジーを利用した農林水産物・食品の活用を含め、食による健康増進に関する研究開発の進展に伴い蓄積される科学的エビデンスの保健機能食品制度への反映、機能性分野における表示、成分分析法等の規格化・標準化」

 8日、日本ヘルスケア学会が都内で開いた年次大会最終日。「サプリメント経済効果」を副題にしたパネルディスカッションがあり、前述2つの閣議決定の内容が紹介された。「食を含めた健康増進・予防に向けて」と題した短い講演の中で行われたもの。講演したのは、経済産業省でバイオ関連を所管する生物化学産業課長である。

 同課長は、「食や運動による健康増進は大事なことだ」との考えを述べた上で、健康から病気に遷移する前段階である未病領域に、新たな市場を創出したり、拡大したりする大きな機会があるとの見解を示した。

 また、医療費の増加につながる生活習慣病などの疾病に対しては、予防や行動変容が大切だと指摘。その上で、「セルフケア、セルフメディケーションがキーワードになってくる」と述べ、予防や行動変容を促す情報をより多く発信していく必要があるとした。「機能性食品のヘルスクレームの仕方についても、もう少し多様性を生むことが必要ではないか。経産省の立場からはそう考えている」とも述べた。

 「ヘルスケア産業課」を省内に抱える経産省が、食による健康増進の旗振り役として動き出しつつあるようだ。機能性表示食品などの保健機能食品を、政府として推し進める「バイオ戦略」の切り口で捉え、産業活性化をつなげようとしているようにも見える。


Clip to Evernote

ページトップ