政府 新成長戦略 基本方針を決定 (2018.10.11)
政府は5日、未来投資会議(議長・安倍普三首相)を開き、新たな成長戦略の基本方針を決定した。全世代型社会保障改革が最重点課題になる見通しで、「健康寿命の延伸」もその中に盛り込まれた。特に糖尿病、認知症、高齢者虚弱(フレイル)対策が挙げられた。
2日に内閣改造を行った安倍普三首相は、早くも5日に新たな成長戦略の基本方針をまとめた。柱は、第4次産業革命、全世代型社会保障改革、地方施策の強化の三つで、このうち最も重要な鍵となるのは、全世代型社会保障改革となる見込みだ。
安倍首相は2日の内閣改造後の記者会見で、「我が国が直面する最大の課題は、国難とも呼ぶべき少子高齢化」との認識を示し、「これに真正面から立ち向かい、全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進めていく」ことを表明している。第4次産業革命と地方施策の強化も、少子高齢化の問題と密接に関係する政策だ。
全世代型社会保障改革では、「健康寿命の延伸」も重要施策の一つに盛り込まれた。具体策としては、糖尿病などの生活習慣病、認知症予防、高齢者虚弱(フレイルなど)対策の三つが掲げられ、これらの予防・対策や健康の維持・増進に取り組む保険者に対して、新たなインセンティブ措置を検討することも盛り込まれた。ただ、インセンティブ措置の具体的内容については触れられていない。
未来投資会議に続いて、同日開催された経済財政諮問会議では、2025年を境に、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に移行することで同人口が急増すること、生産年齢人口や若年層の人口も同時期に急減することが取り上げられ、「後期高齢者も増加するが、これからは若手の人口が急速に減る」(茂木敏充・経済再生担当相)としている。
政府では、新たな成長戦略の具体的中身について、年末までに中間報告をまとめ、来年の次年度予算概算要求の時期までに、3年間の改革工程表を作る予定だ。
経産省が健康政策を提示
5日の未来投資会議では、経済産業省(会議出席者は世耕弘成・経済産業相)も社会保障改革の案を提出している点が、ひとつの注目ポイントといえそうだ。
同省が示した案では、健康維持・増進に関する具体的なインセンティブ措置として、「健康経営銘柄」への投資促進や保険者による「ヘルスケアポイント」を導入するとしている。同省によると、現在の高齢者は過去に比べて10年若返っており、就労意欲が強い半面、「健康寿命」は横ばい状態が続いているという。
経産省では産業構造審議会に新たに「2050経済社会構造部会」を設置しており、雇用・社会保障の一体改革に関する議論を9月21日に開始している。これらのテーマは厚生労働省の政策課題とかなりオーバーラップするが、経産省が同分野に本格的に乗り出してきたことは、今後の健康分野の政策にも影響を与えそうだ。