肌トクホ、オルビスが発売へ 来年1月1日 〝国が許可〟アピール(2018.11.8)
【写真=左:「オルビス ディフェンセラ」。30包入りで税込3456円。10月3~31日までの間、数量限定で先行販売を行っていた 右:記者発表会でのオルビス・小林社長】
肌トクホ(特定保健用食品)を日本で初めて発売するのはオルビスとなる見通しだ。1日、記者発表会を都内で開催し、来年1月1日からの発売を明らかにした。競合品が複数ある機能性表示食品に対しては、国の許可を得ている点で強力に差別化していく構え。越境ECを通じて中国にも売り込み、日中市場で初年度売上22億円を目指す。
越境ECで中国展開も
「今後のオルビスの顔となる商品の一つだ。従来の化粧品と食品の境目を無くす、スキンケアの新たな形となる商品」
1日の発表会でオルビスの小林琢磨社長はこう述べ、年明けに発売する肌トクホ「オルビス ディフェンセラ」(以下、ディフェンセラ)の販売戦略を説明した。先月23日にリニューアル発売した主力のエイジングスキンケアシリーズ「オルビスユー」に次ぐ〝戦略商品〟に位置付ける。
小林社長はまた、「トクホは国の認可が必要だ。企業の判断による機能性表示食品とは根本的に違う」と強調。国の〝お墨付き〟を背景に、ヒアルロン酸の配合品など競合が少なくない機能性表示食品と差別化していく考えを鮮明にさせた。
ディフェンセラは、今年9月21日にトクホの表示許可(再許可)を受けた粉末清涼飲料。認められたヘルスクレームは「肌の水分を逃しにくくするため、肌の乾燥が気になる方に適している」で、〝肌の保湿〟に近い機能性を訴求できる。関与成分は、「植物性セラミド」とも呼ばれるグルコシルセラミドのうち米胚芽由来。グルコシルセラミドは、機能性表示食品の機能性関与成分にもなっている。
ディフェンセラの初年度売上目標は22億円。うち12億円を日本市場で売上げる計画だ。通信販売、全国のオルビス・ザ・ショップ店頭で売り込む。単品で12億円を売り上げるには、積極的な販売プロモーションも必要になりそうだ。
一方、来年2月以降、越境ECを通じて中国でも発売し、初年度10億円の売上を目指す。同品をきっかけにした本格的な中国市場開拓にあたり、同社は1日、中国アリババグループが運営する越境EC最大手「天猫国際」(Tmall Global)との間で戦略提携を結んだ。天猫国際が保有するビックデータを活用しながら中国の消費者にアピールする。
小林社長は発表会で「Tmall国際との提携は、オルビスの中国市場での本気度を示すものだ」と述べ、今回の提携を肌トクホの初発売に並ぶ〝目玉〟に据えた。
「越境ECで圧倒的シェアを誇るTmall国際と提携し、プレゼンスを上げていくことで、ダイレクトに中国市場にインパクトを与えられるだろう。中国市場におけるインナースキンケアのカテゴリーそのものを盛り上げていける可能性もある」と小林社長。オルビス関係者によると、天猫国際が同社と戦略提携を結んだ背景には、ディフェンセラが肌への機能性について国の許可を得て表示できる製品だったことがあるという。
発売第1号、資生堂を先行
オルビスは、ディフェンセラを台湾、シンガポールでも販売していく計画だ。肌トクホの第1号許可を得る快挙を成し遂げたのは国内化粧品最大手の資生堂だったが、発売ではオルビスが国内外で大きく先行することになりそうだ。
資生堂が16年4月に初の許可を受けた肌トクホは「素肌ウォーター」という清涼飲料。同品もグルコシルセラミドを関与成分にしたもので、肌の乾燥に対する機能性の表示が許可されている。だが、現時点までに未発売だ。
一方、資生堂を追うような形で、肌トクホの許可申請を行ったのがポーラ・オルビスグループのポーラ化成工業だった。「ディフェンセラ」という粉末清涼飲料で資生堂に続く表示許可を昨年12月に取得。これがオルビスが来年1月に新発売する「オルビス ディフェンセラ」へとつながる。
発売後の消費者の反応が注目される。〝国の許可〟を全面に打ち出す同品の動きが良ければ、トクホの〝復権〟につながる可能性がある。と同時に、肌への働きを訴求する機能性表示食品は、販売戦略の見直しを迫られるかもしれない。いずれにしても、国のお墨付きを得た美容サプリメントの発売は、日本、そして中国の美容食品市場に地殻変動を引き起こしそうだ。