東洋フーズ 製造に特化 健食OEMに新規参入 (2020.3.12)
健康食品受託製造業界に新たな企業が参入した。3月2日に設立されたばかりの「株式会社東洋フーズ」。受託製造業界では製品の企画・研究開発から製造までトータルに請け負うODMの流れが進んでいるが、同社は逆行。製造のみを受託するOEMに特化するという。「スピード」と「価格」に対する要求を最大限すくい上げ、業界シェアを獲得していく戦略だ。
東洋新薬の100%子会社
拠点は佐賀県鳥栖市。鳥栖と言えば健康食品ODM/OEM大手・東洋新薬のお膝元だが、両社には密接な関係がある。というのも、東洋フーズは、東洋新薬の100%子会社として設立された。社長には東洋新薬の山口和也取締役(製造本部副本部長)が就任。両社を兼任する。
今になって健康食品のOEMに特化した新会社を設立したのはなぜか。それを理解するにはまず、東洋新薬の現在地を知る必要がある。
東洋新薬は健康食品と化粧品の総合受託メーカー。製造だけにとどまらず、独自素材や特定保健用食品の研究開発などといった付加価値を提供できることを背景に、業界に先駆けてODMを展開。これにより、健康食品受託製造業界に独自の地位を築いた。健康食品OEMメーカーが独自素材を保有する現在の流れを作ったのは同社と言える。
一方、4年前からOEMも掲げるようになる。「ODMだけ受託する」という誤解があったからだ。そこで、ODMとOEMの双方を両輪とする受託企業であることを意味する「ODEM」(オデム)を新たな旗印に掲げ、商品企画・設計、処方開発から製造、販売促進支援、さらには商品の配送代行まで一気通貫に対応できる仕組みを現在までに構築。このような「トータルサポート体制」を強みとするのが現在の東洋新薬だ。
「短納期・低コスト」を強みに
それに対して東洋フーズは、健康食品全般の「製造」のみを請け負うという極めてシンプルなOEMメーカーとして立ち上がった。東洋新薬から製造以外のほとんど全てを削ぎ落したと考えると分かり易い。ちなみに、同社の製造拠点は東洋新薬の鳥栖工場及び新工場のインテリジェンスパーク。両社で共有するスタイルを取る。
言うなれば、ODMの鎧を脱ぎ捨てた東洋新薬。東洋フーズとはそうしたイメージの受託製造企業だが、身軽になったことで高まるものがある。受注から納品までの「スピード」だ。そして、逆に下がるのが「価格」である。
つまり、「短納期・低コスト」を強みとするのが東洋フーズ。近年ではほとんど聞くことがなくなった健康食品受託製造企業のセールスポイントを打ち出すOEMメーカーが2020年に新たに誕生したことになる。
グループ業績 拡大図る一手
「『製造だけを任せたい』『企画や試験は自社で行いたい』というニーズも増えています」──先祖返りとも言えそうなOEMメーカーを新たに立ち上げた背景を東洋新薬はこう説明する。
一方、東洋新薬の髙垣欣也副社長は取材に次のように述べている。
「新規顧客の獲得と、東洋新薬グループの規模拡大のため。ODEMのうちOEMの業績を伸ばす目的で新会社を立ち上げた」
同社の2019年9月期グループ売上高は237億3000万円。伸び率は非開示だが、葛の花由来イソフラボンやターミナリアベリリカといった独自素材を活用した機能性表示食品のODMが堅調なこともあって、一定の伸長を達成しているとみられる。ここから更に業績を拡大するには、ODMとともにOEMの拡大が必須と判断しているということだ。
また、髙垣副社長は「東洋新薬のイメージ」にも言及。ODEMを掲げているものの、ODMのイメージが強い。それがOEMを推進するに当たってのボトルネックになっていると言い、そうしたイメージを払しょくする目的もあって新会社を立ち上げることにしたと話す。
東洋新薬は今後もODEMを掲げる方針だ。ただし「スピード」と「価格」を求める声への対応は東洋フーズの領域となる。東洋新薬と比べてどれだけ速く、かつ、安価なのか──それを確かめるのはこれを読んでいるあなたである。