3月頻発する措置命令 ボディメイク、妊活、ヘアケア…(2020.3.26)

優良誤認合体⑥

 年度末の3月。景品表示法に基づく措置命令が頻発している。今月に入ってから23日までに計4件の措置命令が打たれ、その全てが一般健康食品を巡る景表法違反(優良誤認)だった。違反対象商品のカテゴリーを見ると、ボディメイク、妊活、ヘアケア、そしてダイエットとばらばらで、消費者庁の問題意識が広範囲に及んでいることが見てとれる。表示の根拠に対して成分含有量が少なすぎるなど、違反認定の理由が分かり易くなっていることも特徴だ。

 健康食品の広告表示を巡っては、機能性表示食品に関する事後チェック指針が4月1日から施行される。機能性の科学的根拠や広告表示について、景表法違反と認定する事例などを明示し、景表法など事後規制に対する事業者の予見性を高める目的がある同指針の施行によって、機能性表示食品は表示違反事案の激減が期待されている。

 これにより、景表法を執行する同庁表示対策課の潤沢とは言えないマンパワーは、ネット広告を中心に問題の絶えない一般健康食品により割けるようになるといえ、一般健食については来年度以降、これまで以上に執行件数が増えていく可能性がある。

 今月行った措置命令について表示対策課は、景表法の不実証広告規制に基づき優良誤認を認定した理由を比較的詳しく取材などに明かす。実際の処分事例を通じ、事業者の予見可能性を高める狙いなのかもしれない。

 まず、6日の〝マッチョ芸人〟も起用したボディメイク向けサプリメントの優良誤認(第1012号既報)。処分会社は当該製品の主要成分の1つについて、ヒトを対象にした試験データを表示の合理的根拠を示す資料として提示したが、資料で有効性が示された当該成分の1日あたり摂取量に対し、製品の1日あたり摂取目安量はおよそ20分の1以下に過ぎなかった。

 また、10日の〝妊活〟サプリ(=写真中)の広告表示を巡る措置命令(第1012号既報)。処分会社が提示した根拠資料は動物試験によるもので、かつ、サンプル数が少なかったり、統計処理に疑問があったりするものだった。

 このため同庁は、「あたかも、本件商品を摂取することにより、著しく妊娠しやすくなる効果が得られるかのように示す表示をしていた」として優良誤認を認定。同社は「大学教授をはじめとする共同研究チームによる機能性試験において、授かり率が190%高まることが示されました」など表示していた。

 措置命令を受けたゼネラルリンク(東京都渋谷区)によると、当該資料は製造委託先から提供されたものだったという。
 さらに、17日には、白髪が黒髪になる効果が得られるかのように根拠なく表示しながら健康食品を販売していたなどとして、健康食品などのネット販売を手掛ける「あすなろわかさ」(福岡市中央区)に対する措置命令が発表された。違反対象商品は、『黒椿』(=写真下)というサプリメント。

 同庁の発表によると、同社はウェブサイトで黒椿のパッケージ写真や黒髪の女性の写真とともに「黒々艶やかな髪本来の美しさを取り戻す/黒ゴマ、黒ウコン、亜鉛、ビオチンなどの黒々艶やかな天然成分をたっぷり使ったサプリメント/市販の白髪染めや美容院で染めるのが面倒な方にオススメです」──などと表示していた。

 しかし、同社が同庁に提出した表示の根拠資料は配合成分や素材について説明するもので、毛髪に対する効果に関する記載がなかったり、ヒト試験データも一部含まれていたもののサンプル数がかなり少なかったりする内容だった。一般論として、白くなった毛髪を黒に戻すことは、染める以外には困難と考えられている。

 白髪を黒髪にする効果を標ぼうする健康食品の不当表示で消費者庁から措置命令を受けるのは、今回で2社目とみられる。同庁は昨年3月、「白髪染めはしたくない!」「〝黒活〟をスタートしましょう!」などと自社ウェブサイトで表示していた福岡市の企業を行政処分。約840万円の課徴金の支払いも命じた。

 そして19日には、「あたかも、本件商品を摂取するだけで、本件商品に含まれる成分の作用による体質改善により、容易に痩身効果が得られるかのように表示していた」などとしてTOLUTO(東京都渋谷区)が措置命令を受け、発表された。本件商品とは、健康被害が急増しているなどとして同庁が昨年9月、消費者安全法に基づき商品名などを公表していた『ケトジェンヌ』(=写真上)のこと。

 同社も他の3社と同様に表示を裏付ける根拠資料を提出。しかし同庁は認めなかった。
 優良誤認と認定された表示は、「スリムボディ」「ケトジェンヌでボディメイクに燃える!」などといった文言及びウエストがくびれた人物の写真とともに、人物の腹部に炎のイラストや「ケトン体」と記載しつつ、中鎖脂肪酸やアマニ油などの配合素材が「ケトン体質に切り替える」などと表示するものだった。

 表示対策課によると、同社が表示根拠として提出したのは、配合素材に関する一般的な説明資料。それらを摂取することで体質がケトン体質に変わることを示すものではなかったという。

【写真=措置命令を今月受けた企業が行っていた広告表示の一部】


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