緊急事態宣言 影響注視 届出も非常時 確認に時間(2020.4.9)

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 4月7日夕、安倍晋三首相は新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令した。健康食品業界への影響も多岐に及ぶ見通しで、機能性表示食品の届出ひとつとっても通常通りとはいかない。届出の確認を担当する消費者庁食品表示企画課の保健表示室は、宣言を受けた業務体制変更に伴い確認作業に相当の遅延が見込まれるとしている。一方、制度や業界に対する一層の信頼性向上にも期待が掛かる「事後チェック指針」の運用が1日からスタート。これに合わせて届出ガイドラインの一部改正も実施された。消費への影響など先行きに対する懸念事項も多いなか、少なくない事業者がテレワークの業務体制下で様ざまな課題に対応していくことになる。

その中で運用 事後チェック指針
 消費者庁は、8日以降の機能性表示食品に関する届出資料の処理時間について「大幅な遅延が生じます」としている。現在はおよそ週1回のペースで定期的に行われている届出情報更新も大幅な減速が必至だ。

 処理の遅れが見込まれる届出は、新規届はじめ変更届や撤回届。いずれもテレワークでは対応が難しく、見込み処理時間については「何とも言えない。対応人数が少なくなったことで、(変更届なども含めた)届出が積み上がる速度に処理が追いつかなくなりそう」(保健表示室)という。通常体制では50日以内に届出を公表したり、差し戻したりしていた。

 ただ、届出データベースの稼働は継続される。そのため届出資料の提出や、同庁での確認を必要としない販売状況などの更新は引き続き可能。通常の確認体制に戻った際には同庁のウェブサイトで案内が出る予定だ。

 一方、機能性表示食品を巡っては1日から「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」(事後チェック指針)の運用が始まっている。

 また、同指針の運用開始や6月1日に施行される指定成分等含有食品制度(改正食品衛生法)を受け、届出ガイドライン(GL)や質疑応答集(Q&A)の一部改正も実施。指定成分等含有食品に関わる改正を除き1日施行された。

 事後チェック指針の構成は、①科学的根拠に関する事項②広告その他の表示上の考え方③届出資料の不備等における景品表示法上の取扱い──の大きく3項目。このうち、表示する機能性のエビデンスとして「明らかに不適切」と判断される具体例をこれまでの制度運用も踏まえながら示した①は、届出GLとともに届出前の段階から重要となる指針だ。1日のGL改正は全体的には軽微な改正にとどまるが、同指針をはじめ「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項」を届出前に確認するよう求める記載を冒頭(趣旨)部分に新たに盛り込んだ。

 同庁は、「本指針(事後チェック指針)に照らして不適切と認められる事例については撤回指導を含め、今後とも関係法令に基づき適切に対応」(事後チェック指針案に関するパブコメへの回答)する方針。そのため①についても、「事業者に自主点検を促しつつ、仮に問題が発見された場合には、必要な措置等」(同)を講じる考えで、必要に応じて既存届出のエビデンスが十分かどうかの再点検が求められる。

 関連は不明だが、同庁が事後チェック指針の案を公表した1月15日以降、今月1日までに28件の届出が取り下げられた。8日以降は再点検の結果に応じて変更届などを行うにしても、同庁での処理時間が平常時と比べて大きく増す。そのため、今後の販売計画などにも大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

需要動向、4月以降に警戒感
 安倍首相の緊急事態宣言を受け、テレワークに移行する事業者が特に東京都内で目立ち始めている。宣言実施期間の5月6日までの在宅勤務を決めた事業者も見られ、事業者間取引に必要な日常業務に及ぶ制約はこれまで以上に大きくなることが見込まれる。

 新型コロナウイルス感染症の問題がクローズアップされて以降、業界展示会の開催中止などを除けば、今のところ足元では大きな混乱は生じていない。「おかげ様で受注への影響はほとんどみられていない」とある原材料事業者は話す。別の美容系素材の取り扱いが多い原材料事業者も「今のところ影響は出ていない」。また、免疫領域の機能性食品素材の需要が高い状況が広範囲に広がっているもようで、「欧州から突然注文が入った」と話す事業者もある。

 原材料調達の面でも足元での影響は限定的だ。飛行機の減便など海外からの物流が細くなっているため納期の遅れは発生しているが、「致命的なものは出ていない」と海外との取引が多い原材料事業者は話す。ただ、在庫量を注視しながらの供給に臨む状況は避けられていない。

 一方、需要への影響はどうか。原材料、受託製造といった業界の川上では影響があっても軽微にとどまる様子だが、「3月までは以前から決まっていた分。それを計画通りに販売してくれているということだろう。しかし4月からはどうなるか」と今後の需要減少に警戒感を示す。別の事業者も「(2011年の)東日本大震災の時は大きく落ち込んだ。心配している」と話す。

 日刊紙の広告出稿状況を見る限り、健康食品に関する広告本数は通常通りの様子。むしろ、健康食品は直接関係していないが、〝免疫力〟を高める方法を啓もうする全面広告が先月30日付の読売新聞に掲載されるなど新たな動きも出ている。

 また、ここにきてプロポリスに関する広告が目につく状況が生まれている他、広告内で「体調管理」の文言が重用されつつある様子もうかがわれる。「この時期を乗り切りたい人に」といったキャッチコピーが印象的な広告も見られており、一部の最終製品販売会社は足元にある切実な消費者ニーズを捉えようとしている。

【写真=緊急事態宣言の発令を伝える首相官邸ホームページ】

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