eスポーツ対応 じわり 〝Z世代〟取り込みで注目も(2020.6.25)
eスポーツ(エレクトリック・スポーツ)プレーヤー向けのサプリメントがじわりと増えている。訴求機能はアイケア、集中力、リラックス──など。既存のエビデンスを応用できる面もあり、製品展開に向けたハードルはそう高くはない。一説には、eスポーツ競技人口は世界で1億人、関連市場規模は全体で1000億円を超えている。サプリメントがeスポーツ市場に入り込む余地はあるのか。
『e‐supple』(イーサプリ)。通信販売の愛しとーとは昨年8月、こう名付けたチュアブルタイプのサプリメント2品を発売。そして今月4日、3商品目を投入し、「発売と同時にTwitterを通じてゲーマーの中で話題」(今月12日付同社プレスリリース)になったなどと伝えた。
イーサプリのラインナップは現在、『GABA』、『Lutein』、そして新製品である『Guaranine』(ガラニン)の3品。新製品はガラナ抽出物などを配合したもので、「ここぞという勝負時に集中力を高めたい人におすすめのパワーチャージ系サプリメント」(同)。GABAでリラックス、ルテインでアイケア、カフェインに近い機能があると言われるガラナで集中力にそれぞれ対応する布陣だ。
アイケアやリラックス
日本でeスポーツプレーヤー向けのサプリメントなど機能性食品が初めて現われたのは昨年とみられる。
大塚食品は昨年9月、eスポーツプレーヤーと共同開発した炭酸ドリンク『e3』を発売。カフェインやブドウ糖のほかパラチノースを配合したもので、商品コンセプトは「速攻」と「持続」。〝ブレインスポーツドリンク〟と銘打ち、eスポーツプレーヤー以外の需要も取り込む狙いを見せた。
また、森永製菓は昨年12月、主力ゼリー飲料の『inゼリー』からGABAを配合した『GAME BOOSTER』を発売。「長時間ゲームをする時や、集中してゲームに打ち込みたい時のエネルギー補給用として設計」(発売時プレスリリース)したもの。「長時間ゲーム~」「集中~」の部分は、一時的なストレス緩和機能でお馴染みのGABAに担わせたとみられる。
こうした関連商品を発売する以外に、eスポーツ日本代表の「公式食品」となったサプリメントもある。
サッカー日本代表の公式パートナーを務めるキリングループは今年4月、サポート先を「サッカーe日本代表」にまで広げた。キリンホールディングスが販売する機能性表示食品のサプリメント『iMUSE アイ KW 乳酸菌』を同代表の「公式機能性表示食品」として提供すると発表。同品は目の疲労感を軽減する機能性を訴求するもので、身体の中で「目」を最も酷使するのであろうサッカーe日本代表をアイケアの面でサポートする。
最終製品の他に、原材料でeスポーツ対応を訴求する動きも見られ、eスポーツに絡めたサプリメントや機能性食品のマーケティングがじわりと広がり始めている。
関心、若い世代で高く
市場調査会社のNewzooによると、2020年のeスポーツ世界市場規模は約10.6億ドル(およそ1145億円)が予測される。
また、eスポーツの経済効果はゲーム産業だけにとどまらない。総務省が昨年9月から今年3月まで開催した「eスポーツを活性化させるための方策に関する検討会」(一般社団法人日本eスポーツ連合が受託)では、大会用の会場、専用ウェアやチェア(椅子)、関連グッズの他、ヘルスケアや健康増進までも含めた様々な周辺市場・産業への経済効果が見込めると指摘する。
サプリメントはeスポーツ市場でどう立ち回ることができるのか。
eスポーツの競技人口は世界で1億人超とみられているものの、日本の規模はまだまだ小さいとされる。
ただ、eスポーツに関心を持つ層は少なくない。特に、1990年代後半以降生まれのいわゆる「Z世代」(デジタルネイティブ世代)に多く、ソフトウェア開発会社のジャストシステムが15~69歳男女2200名を対象に実施した調査によると、eスポーツを「観戦してみたい」と答えた割合は、中高年は2%にとどまった一方で、Z世代は半数以上に上ったという。
eスポーツ市場規模が最も大きいとされる米国でも、eスポーツを好む層はZ世代に多いといわれる。欧米市場に詳しい業界関係者によると、米国ではeスポーツ向けのサプリメントブランドをメジャーなスポーツニュートリションメーカーも立ち上げており、Z世代からの需要掘り起こしを進める動きもみられるという。
アイケア機能やストレス緩和機能を訴求するeスポーツ愛好者を対象にした機能性表示食品──日本でもそんなサプリメントが出てくると、普段はサプリメントを摂らない若い世代に案外受けるかもしれない。
【写真=海外で開催されたeスポーツ大会の様子】