経産省予測 19年EC市場 売上好調 (2020.8.6)


 7月22日、経済産業省商務情報政策局情報経済課が発表した報告書によると、2019年のBtoC‐EC(消費者向け電子商取引)市場規模が、19兆3609億円に拡大したことがわかった。物販系分野も、前年度の9兆2992億円(EC化率6.22%)から、19年には10兆515億円(EC化率6.76%)と順調に推移。伸び率は、8.09%を記録した。

 特に物販系のEC化率は、ここ10年間で目覚ましいものがあり、2010年の物販系EC化率は2.84%だったものが、順調に右肩上がりの成長を続け、19年には6.76%と、2倍以上の成長を見せている。

 また同報告では、物販系分野の商取引規模が最も大きいカテゴリーは「食品、飲料、酒類」。19年の規模は推定で60兆円以上と見込まれており、個人消費全体の割合は約4割を占める。

 経産省は、購買時の時間節約や家事負担軽減などを理由に、食品系の調達をネットですませたいというニーズが高まっている、と推定。特に国内の共働き世帯数は1989年783万世帯から2019年1245万世帯と、ここ30年で大きく増加しており、今後もこの傾向は続くと見ている。

 さらに身体的に実店舗へ足を運ぶことが負担となる高齢者が増えつつある現在、ネットスーパーの利用状況は19年時点で10%強。博報堂生活総合研究所の調査によれば、今後の利用意向が30%以上との報告もある。

 以上の点から、経産省はネットスーパーの潜在ニーズは高く、BtoCEC市場拡大に向けた伸びしろはいまだ大きいと予測。今後の展望として、業務効率化や適正な在庫管理、物流の効率化を通じた全体コストの抑制への試みが必須で、データ管理が容易なEC販売の利点を活かすことで、コストのスリム化に取り組むことができるのではないかと推測している。

 また、19年は、BtoB‐EC(企業間電子商取引)市場も同様に、前年度比2.5%増の352兆9620億円と成長し、EC化率も前年度から1.5%増の31.7%を記録した。財務省が公表した法人企業統計をもとに経産省がBtoB市場を推計したところ、19年の市場規模が前年から拡大した業種は上から順に、「小売」「建設・不動産業」「食品」だった。

 なかでも食料品製造業の総売上高は19年には44兆8396億円で、前年度の43兆8861億円に比べて2.2%増大。売上高の拡大に伴い、BtoB‐EC市場規模は、26兆6010億円(前年比9.0%増)、EC化率59.3%と激増。19年は売上高の拡大幅以上に、BtoB‐EC市場規模が伸びており、他の分野に比べてECによる取引が、さらに拡大している現状が明らかになった。

EC相性のよい健食売上好調
 食品分野に含まれる健康食品も、BtoC‐ECによる売上を順調に伸ばしている。
 健康食品分野の売上が好調な理由には、健康食品のメインユーザーである高齢者が、テレビ通販やカタログ販売等から徐々にECでの購入に移行している点が挙げられる。

 また、健康志向の高まりから消費者層のすそ野の拡大も進むにつれ、業種を超えて各企業が健康食品分野に参入。自社サイトで直接販売する(DtoC)動きも見られることから、健康食品分野のさらなる市場拡大が見込まれている。健康食品においては、一人一人の健康需要が異なるため、豊富な種類が提供されている商品群とECとの相性がよいことが、「売上好調の一原因と考えてよいだろう」と経産省は分析している。

 BtoC‐EC市場全体が順調に成長している背景には、インターネットの普及が19年になって、飛躍的に伸びたことも影響していると見られる。総務省の通信利用動向調査によれば、2013年以来、インターネットの普及率は、80%前後の横ばい状況が続いていたが、19年には、前年79.8%から89.8と、大幅にアップ。

 その原因の一つに、スマートフォンの保有率が拡大していることがあげられる。総務省によれば、19年度はスマートフォンの世帯割合保有率が前年度79.2%から83.4%と8割を超え、個人保有率も前年度64.7%から67.6%と増加。若年層や高齢者層でもインターネットの利用が、浸透してきていると考えられ、今後も引き続き高い水準で推移するものと想定されている。

 経産省では、EC事業展開をはかる事業者は、今後スマートフォン利用を第一に想定したコンテンツやサービス作りが重要になると、指摘している。



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