ケルセチンフィトソーム 花粉と免疫 繋ぐ独自素材 (2020.8.27)
フラボノイドの一種であるケルセチンの国内需要増加に向けた取り組みをインデナジャパン(東京都千代田区)が進めている。取り組みの第一は、機能性表示食品制度への対応。花粉やハウスダストなどによる目鼻の不快感軽減機能を最終商品で表示できるようにする。第二は、免疫対応素材としての市場普及。同成分には免疫調節機能のあることが示唆されており、ここにきて米国市場で需要が急増。この流れを日本市場にも呼び込む。
インデナジャパンは昨春、ケルセチン含有エンジュ花抽出物「ケルセフィット」の本格販売を始めた。親会社インデナ(イタリア・ミラノ)が開発したもの。インデナ独自の加工技術(=フィトソーム)を施すことで、ケルセチンの課題とされてきた経口摂取した際の生体利用率を大幅に高めてある。
同社は現在、ケルセフィットに含まれるケルセチンを機能性関与成分にした、機能性表示食品の届出サポートを手掛ける準備を進行中。今年2月から日本国内で進めていた、日本人対象のRCT(ランダム化比較試験)の結果をまとめた論文投稿に向けた準備を現在進めており、来春までにシステマティックレビューなどをまとめ、届出サポート体制を整える。
同社によると、現時点で想定可能な機能性表示は、「ケルセチンは、花粉、ホコリ、ハウスダストなどによる目や鼻の不快感を軽減することが報告されています」
静岡県立大学の山田静雄特任教授(同大薬学研究院附属・薬食研究推進センター長)監修の下、目鼻に不快感のある日本人男女健常者(軽症者含む)を被験者に国内で実施したRCTを主要な科学的根拠に、こうしたヘルスクレームを行う機能性表示食品の届出サポートを来春以降、積極的に進めていく考えだ。
一方、前述の想定ヘルスクレームは今後拡充される可能性もあるとしている。機能性表示食品を巡る直近の届出動向を受けて、「免疫」の文言を追加できるか検討を始めているためだ。
花粉などに起因する目や鼻の不快感はアレルギー反応の一種。これを抑える働きとしては、抗ヒスタミン作用(ヒスタミン遊離抑制作用)が知られ、ケルセチンやケルセフィットには同作用のあることが示唆されている。
一方、抗ヒスタミン作用は免疫調整にも関与すると考えられている。そのため同社では現在、作用メカニズムなどとして「免疫」の文言を前述の想定ヘルスクレームに挿入可能かどうか検討中だ。「免疫に関する機能性表示も不可能でないことははっきりしている。(ケルセチンで免疫表示を行うには)課題もあるがチャレンジする価値は大きい」と話している。
実際、ケルセチンの機能性を巡る現在のキーワードは「免疫」や「抗ウイルス」。インデナのケルセフィットはここにきて、ケルセチンの主要機能の一つと考察されている免疫調整機能や、同機能が関与すると考えられる呼吸器系に対する機能性などに注目が集まり、米国市場で需要が急伸している。
同社によれば、同市場での昨年の販売量は年間5㌧程度だった一方で、今年は30㌧を超えてくる見通し。COVID‐19(新型コロナウイルス)の感染拡大を受けた採用件数の増加が背景にある。
インデナ本社は現在、COVID‐19に対するケルセフィットの可能性を検証しようとしている。日本では、花粉アレルギー反応に対応する機能性表示食品として市場普及を図ろうと準備を進めてきたが、状況は変わった。インデナジャパンでは、機能性表示食品制度への対応に加えて、アレルギー反応を軽減する機能性の作用メカニズムである免疫調整機能や呼吸器系に対する機能性などをテコに、ケルセフィットの国内需要を押し上げたい考え。
抗疲労素材を投入へ 「機能性」対応も視野
ロディオラロゼア抽出物の原材料販売をインデナジャパンが始める。ストレスや疲労などに対する機能性が期待でき、有効性を報告する文献も少なくないことから、機能性表示食品制度への対応も視野に入れている。ロディオラロゼアは、紅景天やイワベンケイ、チベット人参などとも呼ばれる高山植物。欧州などでは「薬用植物」と捉えている。
伊インデナ社が新製品として開発した。原料とするのはロシア産(シベリア地域)ロディオラロゼアの根茎で、規格成分はロザビンとサリドロシドの2成分。ロザビン3~4%品(サリドロシド含量1~2%)、同5%以上品(同1.8%以上)の2製品を用意した。米国など海外市場では既に供給が始まっており、日本では近く、インデナジャパンがサンプルワークを開始する。
ロディオラロゼアの機能性としては、一般的に、抗疲労機能や抗ストレス機能が知られる。有効性を検証した臨床試験に基づく論文がこれまでに少なくとも11報発表されており、肯定的な結論をまとめたシステマティックレビュー論文も存在する。
こうした文献の存在を背景に、同社では今後、ロディオラロゼア抽出物に含まれるロザビンなどを機能性関与成分にした機能性表示食品の実現可能性を検討するとともに、独自にシステマティックレビューを実施することを検討している。