都内にサプリ試作ラボ 狙う リードタイム削減(2020.9.24)

三生合体②

 「商品設計から販促支援までサプリメントをお客様とともに考え、膨らませ、生み出す場」。サプリメント・健康食品受託製造大手の三生医薬(静岡県富士市)が都内に新設した「ADC」(=アプリケーション・デベロップメント・センター)はそうした役割を持つ施設という。2020年9月16日、同社がADCのオープンに合わせて業界専門メディア対象に開いた施設見学会を取材した。

 ADCの所在は東京都品川区大井1丁目。JR大井町駅から徒歩約5分。昨年7月に竣工したばかりの大型タワーマンション「シティタワー大井町」の1階商業施設部分にある。三生医薬の東京支店からも非常に近い。

 もともとカフェなど飲食店の入居が想定されていたテナントと思われる。敷地面積は70~80平方㍍と広くはないものの、天井が高いため居心地のいい空間。そこに8~10人用会議テーブルと椅子一式、試作カウンター、そして大型ディスプレイ(モニター)が設置してある。

 「サプリメントの試作スタジオ」。三生医薬はADCをそう呼ぶが、実態は、3名の常駐スタッフを抱えるサプリメント・健康食品の最終製品開発ラボだ。
 試作カウンターには、ソフトおよびハードカプセル、打錠、顆粒、ゼリーの少量試作機器を設置。崩壊性試験器まで置いてある。簡単な実験もできる。

 同社の顧客はADCを訪れることで、発売したい商品の形状や配合素材、風味などの希望などを常駐スタッフに伝えながらあれこれと試した上で、その場で試作品の概要を決定できる。サプリメント・健康食品受託製造業界ではこれまでにありそうでなかった施設だ。

 一方で、ADCは顧客の利便性を高めるためだけの試作ラボではない。「商品設計から発売までのリードタイムの短縮」──今年1月に代表取締役会長兼社長に就任した石川泰彦氏はADC開設の狙いをこう話す。

 「従来は、お客様が希望する仕様やイメージを営業員が持ち帰り、開発部に依頼して試作が行われていた。(そのため)お客様の希望に沿った試作品をお届けするまでに何度もやり取りがあり時間が掛かっていた」と石川代表。ADCを活用することで、その時間を大幅に短縮しようというわけだ。

 また、短縮するのはそこだけではない。少量試作後の量産試作から発売までのリードタイムも大幅に短縮しようとしている。商品設計から発売まで従来擁していた期間を「およそ半分」(石川代表)まで短縮したい考え。

 その一環としてADC内部の壁面に設置したのが大型モニターだ。ADCと、富士市や富士宮市を拠点とする生産工場、研究所をオンラインで繋ぎ、大型モニターを通じて中継。顧客は現地を訪れることなく、現地の実務担当者と密なやり取りを行えるようにした。

 「より良い新商品をお客様と一緒に開発するためのディスカッションの場」にしたいと石川代表。顧客だけではなく、原材料事業者をはじめ外部研究者、広告宣伝関係者なども交えながら、リモートでも活発な議論を行える場として活用してもらうことを想定している。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、都道府県をまたいだ移動をしづらい状況が続いている。加えて、「健康」を旗印にした食品を製造していることもあり、受託製造企業の大半が工場などへの来訪を厳しく制限している。

 そのようななかで三生医薬が新たに立ち上げたADC。「新型コロナ以前から検討していた」(石川代表)というが、ウィズコロナ時代の「ニューノーマル」(新常態)にいち早く対応した施設になりそうだ。同社では今後、工場監査もADCを拠点にリモートで行っていきたい考え。「むしろリモートのほうが、製造ラインの細部まで確認できる」(同)

【写真上=三生医薬が2020年9月14日にオープンした「ADC」の内観。内装デザインにもこだわった。「(ラボとしての)機能性とディスカッション。快適性と清潔感。加えて工場感のあるデザイン」を空間デザイナーに依頼したという。】
【写真下=設置した大型ディスプレイを通じてリモートでディスカッション。工場や研究所に訪問するコストを削減できる】


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