奈良県立医科大 コロナ巡り研究発表 (2020.9.24)
奈良県立医科大学が2020年9月15日に発表した基礎研究データが話題を呼んでいる。柿タンニン(柿渋)が新型コロナウイルスの不活化に有効である可能性を実験的に証明したというもの。研究グループは「柿を食べたらいいというわけでは決してない」と話しているが、さっそく、柿タンニン配合食品を発売する動きも見られている。
同大の発表によると、柿から高純度に抽出した柿タンニン(柿渋)が、新型コロナウイルスを1万分の1以下にまで不活化することを、試験管内実験で確認したという。ヒトの口腔内に似せた実験条件下で、新型コロナウイルスと唾液のみ、または新型コロナウイルスと柿渋を加えた唾液を比較した。
この基礎研究を行ったのは、同大の伊藤利洋教授(免疫学)と矢野寿一教授(微生物感染症学)ら。今回の実験で示された新型コロナウイルスの不活化効果は、ヒトの口腔内でも起こる可能性も否定できないものの、「柿タンニン(渋柿)の濃度ならびにウイルスとの接触時間が極めて重要」だとしている。
今後、柿タンニンを口腔内に一定時間滞留させた場合の新型コロナウイルス予防効果を、ヒトを対象に科学的に検証したい考え。
同大は、特許出願も行った今回の伊藤教授らの実験結果を社会や産業に生かしたい考え。そのため、新型コロナウイルス感染予防を目的にした、渋柿を利用するガムやアメなど食品の共同研究開発先を募る(共同開発参加申請書の受付期間は20年9月30日まで)。「開発した製品は世界の市場に提供することを考えている」という。
同大は新型コロナウイルスの不活化を巡る研究結果を以前にも発表している。20年5月、オゾンガスの曝露による新型コロナウイルスの不活化と、そのための条件を実験的に証明したと発表。この実験を実施したのが、今回の柿渋研究を担当した同大の矢野教授だった。同大は、バイオセーフティレベル3(=上から2番目の警戒レベル)の実験室を保有しているという。
【写真=奈良県立医科大の研究成果を伝えるニュース番組。「柿を食べればいいわけでは決してない」と同大】