免疫対応 広告展開に業界熱視線 (2020.10.8)
「免疫機能の維持」をうたう日本初の機能性表示食品の発売スケジュールが明らかになったことで、業界の次の関心は「どのような広告展開を行うのか」に移った。「免疫は医療にまたがる領域」とキリン自身が指摘している。微妙なバランス感覚を求められそうだが、〝日本初〟の名に恥じない、従来なかった広告展開を期待したい。
サプリメント・健康食品業界がより注目するのは、キリンよりもファンケルの広告展開だろう。これまでにも販売ターゲットに「刺さる」広告を展開。『えんきん』や『内脂サポート』など、サプリメント形状機能性表示食品の売上高を大きく伸ばしてきた。
キリンにしても、免疫対応機能性表示食品のリーディングカンパニーの座を確固たるものにしようとするはず。まずは飲料に関して大型な広告展開を進めそうだ。
ただ、両社とも、広告展開の障害物として新型コロナウイルスが立ちはだかる。発売開始時期が例年だと流行開始期と重なるインフルエンザウイルスも同様だ。広告がウイルス感染予防効果を想起させるような表現に傾いていると受け止められるリスクは避けたい。
とくに、サプリメントの販売に慣れているとはあまり言えない調剤薬局を販路とするキリンは、自社の広告だけでなく、店舗側が独自に用意するPOPなど広告宣伝物の表現にも気を配らなくてはならない。取扱店舗数が拡大すればするほど、繊細なコントロールが求められそうだ。
一方で、そもそも「免疫」とは、「医療にまたがる領域」である。9月28日の機能性表示食品iMUSE商品発表会でキリンホールディングスはそうした認識を明確にしている。免疫表示がこれまで難しかった理由として、客観指標と主観指標の関係が不明であることのほか、「免疫は医療にまたがる領域」であることを挙げた。
キリングループは35年におよぶ免疫機能研究の実績を持つ。免疫の〝司令塔〟とも呼ばれる免疫細胞の一種、pDCの活性化機能を2012年に明らかにしていたプラズマ乳酸菌については、これまでに計25報の研究論文を発表。うち10報はヒト臨床試験によるものだ。
そのように積み上げてきた免疫機能に関するエビデンスと、〝未病〟の考え方も取り入れた国の「健康・医療戦略」があいまって、「食」と「医」にまたがる免疫領域に食品として事実上初めて足を踏み入れることになったのが、キリンとファンケルが間もなく市場に投入する機能性表示食品である。
一般消費者に誤認されることなく、食品が持つ機能性を改めて社会に知らしめ、そして「驚かせる」広告展開を期待したい。
キリン、「ターゲットは広い」
年9月28日にキリングループが開催した機能性表示食品iMUSE商品発表会での記者との主な一問一答は以下の通り。回答者は、キリンホールディングス執行役員の佐野環ヘルスサイエンス事業部長ら3名。
――キリンの機能性表示食品「イミューズアイ」はアイケアを訴求するもの。イミューズブランドは免疫以外も包括的に扱っていくのか。
「『イミューズアイ』は、免疫機能を介したアイケアの機能性表示食品。『イミューズ』は免疫機能をつかさどるブランドと考えている」
――免疫機能表示を得られて(届出受理されて)どう思ったか。
「免疫研究をしているものとしては格別の思い。多くの研究者がチャレンジしたなかで、達成できたのは良かったなと捉えている」
――販売ターゲットについて。
「ターゲットは広いと考えている。これまではイメージだけだったが、今回(の機能性表示食品)は左脳で理解してもらえる。表示を読んで理解し、チェックしていただけることがこれまでと最も大きな違い」
――初年度売上目標について。
「発売は11月。(年内は)残り1カ月ということもあり、数字は控えたい」
――免疫機能が認められた(受理された)理由をどう考えているか。
「(機能性表示食品制度は)許可制ではない。制度に照らして適当な届出を行ったためだと考えている」
――今後の研究の方向性について。
「免疫のフィールドは広い。体調維持以外にも様々な機能があると考えている。例えばアンチエイジングなど。大きな可能性を考えている」
──イミューズブランドは今年に入り販売が伸びているということだが、主な要因は飲料の伸びか。
「貢献したのは飲料。ただ、分母は小さいが、調剤薬局向けのサプリメントは伸び率が最も大きく、250%に達している」