コロナ影響 業績に色濃く 長期化で相次ぐ下方修正(2020.11.12)


 3月や12月を決算月とする上場企業の第2四半期、第3四半期の業績が伝えられている。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、業績の見通しが不透明なことから、業績予想を前期実績から下回ることを発表している企業が少なからず見られていたが、コロナの影響が長期化するにつれ、再度の下方修正を余儀なくされる先が増えつつある。

 コロナ禍は様々な業界に影響を与えている。その影響を受けたもののひとつとして挙げられるのが、訪日客消滅によるインバウンド需要の激減だ。前年には月に200万人以上いた訪日客が、1月を境に各国の出入国の制限によって徐々に減り始め、5月には2000人を割り込む数字にまで落ち込み、インバウンド需要はほぼゼロとなった。

 観光庁がまとめた訪日外国人消費動向調査によると、2019年の訪日外国人旅行消費額は年間で4兆8000億円に及んだ。それがコロナ感染拡大以降ほぼゼロになったわけだ。観光・宿泊業界をはじめ大きな打撃を受けた業種は多々あるが、健康食品や化粧品業界も例にもれない。

 先月27日、2020年第3四半期の業績を発表した小林製薬は、昨年同時期に74億円あったインバウンド売上が60億円減り14億円まで落ち込んだ。訪日客から人気のあった更年期対応の医薬品や健康食品などが売上を大きく落とし、なかには9割も売上が減った商材まで出た。

 小林は今年7月に通期業績を下方修正している。除菌・衛生関連製品の一部需要はあった一方で、インバウンド需要の大幅低下、国際事業における各国のロックダウンや外出自粛などの影響を受け、全体の売上高が110億円減ると発表している。

 ここ数年、インバウンドを成長要因のひとつに売上を拡大してきたファンケルも、新型コロナの影響を色濃く受けた。今月4日に21年3月期の中間決算を発表。昨年度139億円あった化粧品、健康食品のインバウンド売上を今期はわずか2億円と見積もる。売上高も従来予想の1270億円から1200億円、経常利益を146億円から132億円に下方修正した。

 コロナの影響は、緊急事態宣言による外出自粛や営業時間の短縮などが外食産業に関わる商材の売上も左右した。

 ハウス食品グループ本社の21年3月期の中間決算では、健康食品事業を担うハウスウェルネスフーズが収益の柱としている健康飲料、サプリメントの「ウコンの力」が外飲み需要の急減で大幅減収となった。同品の第2四半期間の売上高前年比(出荷額ベース)は47.5%に半減。全体の売上高は対前年比28.8%減の106億6600万円、5800万円の営業損失となった(前年同期は5億円の営業利益)。

回復スピード、想定より緩やか
 一方、健康食品市場以上に影響を強く受けているのが化粧品だ。ポーラ・オルビスホールディングスは20年12月期の通期業績予想を下方修正した。新型コロナによって影響を受けた業績の回復スピードが「想定以上に緩やか」であることから、今年4月に公表した業績予想の売上高を150億円引き下げ、1750億円とした。前期実績から比べると450億円マイナスとなる見通しだ。

 資生堂の業績低迷も深刻だ。今月10日発表した通期業績予想では、売上高が380億円マイナスになると下方修正した。消費マインドの冷え込みが想定以上だったことなどに加え、第4四半期間において、「市場回復の遅れが一定程度継続する」ことを考慮したという。前期の売上高実績からは2000億円以上を下回るという。

 また、業界2位のコーセーも、下方修正こそ発表していないが業績の厳しさは同様だ。訪日客数急減による業績悪化なども影響し、国内では42年ぶりとなる新工場の稼働延期、生産ラインの見直しなどを検討している。

 さらに健食、化粧品の主要販売チャネルのひとつであるドラッグストア(DgS)でも厳しさを増している先がある。

 インバウンド需要などを背景に業績を伸ばしてきたココカラファインは、コロナ再拡大の懸念があるとして、先月28日に21年3月期の業績予想を下方修正した。売上高は前の期と比べ223億円減になる見通しだ。
 ココカラ同様に都市型店舗のDgSで、インバウンド対応を強く打ち出してきたマツモトキヨシホールディングスも振るわない。業績予想の下方修正はしていないものの、コロナの感染拡大が進んだ今年3月から既存店売上が前年を下回る月が続くなど低調に推移。店舗売上が2ケタ減と大きく減らす月もあり、訪日客消滅の影響を強く受けている。

しかし需要健在 狙う海外
 ただ、明るい材料もある。巣ごもり需要によって伸びているインターネットなどの通販だ。
 昨年、東証マザーズに上場した新日本製薬は、コロナ禍で店舗販売、卸売販売が影響を受けたものの、主力の化粧品の通販が好調に推移。コロナ影響の減少分をカバー、売上高は微増ながらも増収となった。

 プーアル茶など健康食品や化粧品を通販展開するティーライフも増収だった。通販事業は微増だったが、高麗人参や黒にんにくサプリなどがテレビショッピングの販売で巣ごもり需要を獲得、増収に寄与した。

 ファンケルも全体の売上は前年を下回っているが、サプリの需要が大きく落ち込んだわけではない。上期の売上実績では、前期比で50%増を示した生活習慣対策のサプリをはじめ、ダイエットやビタミン類などが大きく伸びており、消費者の健康意識の高まりが要因と同社では分析している。

インバウンドの回復、見通せず
 コロナ禍は長期化しそうな気配をみせており、以前の訪日客の賑わいが来年の早い段階で回復するとはイメージしにくい。

 そのなかで打開策として考えられるのが、これまでの訪日客を日本国内で〝待つ〟姿勢ではなく、越境ECなど海外に出向き、〝攻め〟の戦略を強く打ち出すことだ。健康食品や化粧品のインバウンド需要は中国をはじめとするアジア諸国が大半とみられる。ジャパンブランド自体が敬遠されているわけではない。すでに海外市場にも軸足を移して、売上回復に努める先も増えつつある。

 資生堂では、中国の大規模なショッピングイベント、ダブルイレブンの商戦に合わせ、主力の化粧品ブランドを越境ECサイト向けにライブ配信を開始するなど、海外で勝負することを始めている。

 しばらくは続くであろうコロナ禍で、各企業の販売戦略は今後大きく変わる。ウィズコロナでの各企業の戦略が業績にも大きく左右しそうだ。


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