栄研、業界に協力要請 素材情報DB「共に拡充を」(2020.11.12)

栄研_素材DB拡充へ①

 ウェブサイト「『健康食品』の安全性・有効性情報」を運用する国立健康・栄養研究所(栄研)は、同サイト内の「健康食品の素材情報データベース」(DB)について、健康食品業界の協力も得ながら掲載情報の充実化を図る。サプリメント・健康食品素材の機能性や安全性に関する論文等の情報を提供してもらいながら掲載情報を拡充したい考えで、先月末までに業界団体に協力を要請した。同DBは、業界関係者から特に有効性情報の乏しさを疑問視されがちだったが、そうした状況が大きく変わる可能性がある。

 栄研は先月末までに、同DBに掲載する情報の「追加/更新の迅速化」を図るとして、業界団体を通じてサプリメント・健康食品関連企業に協力を依頼した。栄研が定めたDB掲載基準に基づく論文などの提供を求めている。

 また、企業がDBへの掲載を希望する論文などを、栄研が定めた記載様式に基づき、企業自らで整理し提出して欲しいとも要請。この場合は掲載までの期間が短縮できるとしている。

 健康食品業界に対し、栄研がDB掲載情報の提供を公式に求めたことはこれまでなかった。今回の栄研からの協力要請がきっかけとなり、業界と栄研の関係がより深まることを期待する声が業界内から上がっている。

 業界に情報提供を依頼した背景について、栄研の食品保健機能研究部の千葉剛部長は取材に、「我われだけではできる範囲が限られる」と述べ、企業の協力を得ることで情報収集の範囲、量をさらに充実化させたい考えを示した。

 千葉部長はまた、「DBに掲載されていない情報があった際は、事業者から『これもある』といった形で情報提供していただける場として、DBを利用してもらいたい。我われと事業者とで、可能な限り情報共有できればいいと考えている」とも話した。

 背景には機能性表示食品の届出が増加の一途を辿っていることもありそうだ。素材の機能性や安全性に関する国内発の論文が大きく増加しているとみられる。ただ、栄研に近い関係者は、「さすがに日本語論文までは十分に追い掛けられない」と話しており、そうしたギャップを業界の協力を得て埋めていきたい考えもありそうだ。

 業界団体の日本健康・栄養食品協会では、会員企業に対し、栄研に提供する情報の事前確認などの支援、サポートを行う考えを示している。

掲載基準も示す
 栄研は業界への協力要請にあたり、DBに掲載する論文などの基準も開示した。有効性情報についてはヒトを対象とした経口摂取の臨床試験であることが原則。安全性については、医薬品等の相互作用▽毒性試験▽被害事例▽ヒトに対して有害性がないとする情報▽ヒトにおいて有害事象が認められた情報──などを求めている。

 栄研がDB掲載基準を公にするのは初とみられる。栄研がまとめた今年10月1日付の掲載基準によると、有効性情報のうちRCTについては、試験デザインに関して「二重盲検無作為化プラセボ対照試験」、症例数は「試験群の症例数が10名以上」──などが基準になるとしている。

 また、二次解析した論文の採用基準については、介入期間が長く、何年かおきに経過を報告した論文▽一次解析と同じ対象者かつ別の指標で検討した論文──は「掲載可」とする。ただし、評価指標のベースライン値がプラセボ群と差がない場合に限るとしている。一次解析と異なる対象者で検討した論文は「掲載不可」とする。

 一方、安全性情報のうちヒトに対して有害性がないとする情報の採用基準は、ヒトを対象とした試験のメタ分析とする。逆に、ヒトに対して有害事象が認められた情報は、ヒトを対象とした臨床試験やケースシリーズ。被害事例については、症例報告や会議録も採用するという。

 また、医薬品等の相互作用に関する掲載基準は、原著論文や症例報告となる。医薬品との併用による影響を検討したもの▽薬物代謝酵素への影響を検討したもの▽特定の製品情報──を採用するなどとしている。

【写真=栄研が運用する素材情報データベースのトップ画面。掲載情報の提供が業界に求められたことはこれまでなかった】


Clip to Evernote

ページトップ