オリザ油化 シワケア、果実から新素材 (2020.11.12)
バクチオール規格化
肌シワ改善の有効成分としてスキンケア化粧品分野で利用されているレチノールと化学構造が似た成分、バクチオールを規格化したサプリメント用途の植物由来素材をオリザ油化(愛知県一宮市)が新たに開発した。マメ科植物オランダビユの果実を原料にしたもので、同社で実施したヒト試験で、経口摂取でもシワの改善に働くことが確認されている。今月16日から都内で開催される展示会に出展するのにあわせ、配合提案をはじめる。
同社が新たに開発したのは『フィトレチノール』。化粧品向け原材料も同時に開発した。サプリメントとスキンケア化粧品の両方に展開できる内外美容素材として国内外で提案する。有効成分となるバクチオールは、同社によると、皮膚刺激性や安定性に課題があるレチノールの天然由来代替成分として国内外で注目されつつあるという。
原材料となるオランダビユの果実は、インドから東南アジア、中国に分布するマメ科植物。強壮目的でインドや中国で使われてきた経緯があり、漢方生薬では「補骨脂」(ほこつし)として知られる。
フィトレチノールの製品ラインナップは、オランダビユ果実を原料にバクチオールの含量を3%で規格化した油液と、同1%の水溶性粉末の2製品。化粧品向けでも同じスペックの製品をそろえた。オランダビユ果実には光毒性が報告されているフラノクマリン類のソラレンが含まれているが、各製品とも100%除去する。同成分が検出されないことを製品規格として担保する。
同社の研究では、フィトレチノールとオランダビユ果実由来バクチノールの双方について、紫外線(UV)の影響による肌のシワ形成を抑制する働きを持つ可能性が示唆されている。
バクチオールとして1㍉㌘に相当するフィトレチノールを4週間、社内ボランティアに摂取してもらい、抗シワ化粧品開発に利用される公的ガイドラインに従いシワの改善度合いを評価したところ、目じりに特に深いシワのある被験者に対して改善が認められた。
また、皮膚の線維芽細胞がUVなど光老化の影響で萎縮し、シワが形成されるのを抑える機能を持つ可能性を細胞試験で確認。細胞試験ではほかに、乖離することでシワの形成につながる線維芽細胞と細胞外マトリックスの結合を強める働きも見出したという。
抗シワ機能が報告されている美容食品素材は他にもあるが、保湿機能を作用メカニズムにするものが大半。そのため、オリザ油化では新製品について、「今までの概念とは異なる」まったく新しい抗シワ素材だとしている。
新製品に葛由来乳酸菌も
オリザ油化の今秋の新製品は他にもあり、サプリメント用原材料の新製品として植物性乳酸菌も投入する。『吉野本葛』など製菓の製造販売で知られる井上天極堂が開発した葛由来乳酸菌について独自ブランドを立ち上げる。美容機能と免疫機能の両面から市場開拓を進める。
同社が乳酸菌の供給を手掛けるのは1954年の会社設立以来初。井上天極堂が奈良県産業振興総合センターと共同開発した植物性乳酸菌『葛乳酸菌』について、井上天極堂と連携しながら、オリザ油化の独自ブランドとして『スキンバリア乳酸菌』と『イムノライズ乳酸菌』の2つを立ち上げ、サプリメント・機能性食品向けに供給する。
いずれも死菌体。腸内での吸収性を高めるためにナノ型処理を施してある。
スキンバリア乳酸菌については、オリザ油化で肌のバリア機能に関する科学的根拠をゼロから積み上げた。これまでに、肌の保湿などバリア機能を担う、コーニファイドエンドロープを構成するタンパク質の発現を高める働きを動物試験で見出したほか、ヒトに対しても保湿機能とバリア機能の向上が期待できることを社内ボランティア試験で確認した。
このヒト試験では、唾液中IgA(免疫グロブリン)の増加傾向も認められ、粘膜免疫に対しても機能する可能性が示唆されているという。
一方、イムノライズ乳酸菌については、井上天極堂らが明らかにした免疫機能を高める働きや、抗ウイルス機能を全面的に打ち出し、現代社会のニーズに応える。
免疫機能については、自然免疫にかかわる免疫細胞のNK細胞を活性化させるインターロイキン‐12の産生を大きく高める機能が確認されている特長がある。この点で差別化し、需要を獲得していきたい考えだ。また、抗ウイルス機能については、園児496名を対象に国内で実施されたヒト試験で、ウイルス性感染症の罹患率を低下させる機能のあることが確認されているという。
【写真=オランダビユの花】