SRなのに 「機能があります」 主語は成分「問題なし」の見解(2020.12.10)


 研究レビュー(SR)に基づく機能性表示食品の届出をめぐり、「報告されています」ではなく「機能があります」とした従来にない届出がこのほど公開され、業界関係者の一部で注目を集めている。

 「機能があります」の主語は、届け出た最終商品そのものではなく、あくまでも機能性関与成分。そのため、届出内容の形式確認を行う消費者庁の担当課は問題ないとの認識を示す。ただ、これまで業界では半ば常識として、SRによる届出には「報告されています」の文言が必要と理解してきた。

 表示された機能性の科学的根拠が商品自体にあると一般消費者に誤認させないための手段として、届出表示に「報告されています」の文言が絶対的に必要かどうか──議論を呼びそうだ。

「報告されています」使わず
 「本品にはN‐アセチルグルコサミンが含まれます。N‐アセチルグルコサミンは、歩行や階段の上り下りにおけるひざ関節の悩みを改善し、関節軟骨成分の分解を抑えることで関節軟骨の維持に役立つ機能があります」

 こうした機能表示を行うとする届出を消費者庁が12月1日に公開。届出者は日本水産で、『さっと飲めるN‐アセチルグルコサミン』などその他加工食品2商品を同時に届け出た。表示見本で原材料を見ると、機能性食品成分・素材と呼べる材料は、N‐アセチルグルコサミンに限られる。

 届出表示は2商品とも同じ。「報告されています」の文言はないが、公開された届出資料のうち「機能性の評価方法」を見ると、いずれも「最終製品ではなく、機能性関与成分に関する研究レビューで、機能性を評価している」にチェックがある。

 これまでに公開されたSRに基づく届出表示は、表示する機能性について、「報告されています」と表現しているのが一般的。既に取り下げられたが、今のところ1件しか届出のない最終製品に関するSRも同様で、「報告されています」の文言は、少なくとも業界内においては、その届出がSRに基づくものであることを示す〝目印〟的な役割を果たしてきたと言える。

 そのため、今回の新たな届出表示をめぐり業界内からは、「(届出件数も多い)ニッスイのような大手が届け出ているのが気になるが、何かの間違いだろう」といぶかる声も聞こえてくる。

GLとの整合性、どう考えるべきか
 SRに基づく届出表示で「報告されています」の表現が一般的に使用されてきた背景は何か。機能性表示食品の届出ガイドライン(GL)に示された届出表示に関する以下の指針がその一つだ。

 「機能性関与成分に基づく科学的根拠なのか、当該成分を含有する食品(最終製品)に基づく科学的根拠なのか、その科学的根拠が最終製品を用いた臨床試験に基づくものなのか、研究レビューによるものなのかが分かる表現にする」

 「当該成分に基づく科学的根拠を有する場合は、当該食品自体に機能性があるという科学的根拠を有するものではないということが明確になる表現とする。研究レビューによる場合は、『報告されている』ということが明確になる表現とする」(一部略)。

 その上で、機能性関与成分のSRで科学的根拠を説明した場合の具体的な表現例として以下を提示している。
 「本品にはA(機能性関与成分)が含まれます。AにはBの機能があることが報告されています」

 一方、最終製品の臨床試験による場合は次の通り。
 「本品にはA(機能性関与成分)が含まれるので、Bの機能があります」
 このようにGLで示された指針に照らして、機能性関与成分のSRで検証した機能性を「報告されています」ではなく「機能があります」と表現した今回の届出は、整合性が取れていないように思える。

 この点について消費者庁食品表示企画課の担当官は取材に、制度の運用を変えたわけではないとした上で、「(GLで示したのは)あくまでも表示例。そう(=報告されています)と書かないといけないわけではない」と語り、今回の届出表示の「機能があります」の主体は、最終商品自体ではなく、あくまでも機能性関与成分として届け出たN‐アセチルグルコサミンであることが明確に分かる届出表示になっているため、問題はないとの見解を示した。

今後もOKなら「ありがたい」
 この見解を巡り業界関係者は、「(SRの届出では)『報告されています』と書かないとダメだと今まで言われてきたように思う」と述べ、腑に落ちない様子。しかし、「今後はそう書かなくてもいいのであれば有り難い」とも話す。

 一方、別の関係者は、届出の事後チェックを担当する消費者庁表示対策課の反応に注目する。「食品表示企画課と見解が違うということはないか」とし、両課で考え方がことなることを背景に疑義が生じる可能性に懸念を示す。

 他方で、食品表示企画課の見解に賛同する意見も上がる。GLで提示された「報告されています」の表現はあくまでも〝例〟。最終商品で科学的根拠が確認されていると消費者に誤認させない目的を果たせるのであれば、「報告されています」にこだわる必要はないと考えられるからだ。この関係者は、「(制度施行前)消費者庁は、ヘルスクレームについて事業者の(GLを踏まえた)創意工夫の余地をちゃんと認めていた」と語る。

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