食品表示 アプリで代替可能か 消費者庁が実証調査(2020.12.10)
容器包装上に行う必要のある食品表示をデジタルツールで代替可能かどうか実証する調査事業を、消費者庁が今月から都内などで進めている。専用の食品表示データベースと、スマートフォンアプリを構築し技術的課題を検証する他、実際にスーパーマーケットの店頭で消費者にアプリを通じて表示を利用してもらい、反応を探る。調査対象商品にサプリメント・健康食品は含まれないが、とくに保健機能食品や指定成分等含有食品は容器包装上に必要な義務表示が多くなる。店頭販売する事業者にとっては調査の行方が注目されそうだ。
店頭で消費者意向も探る
食品表示の主な役割は、食品を摂取する際の安全性と、消費者の自主的かつ合理的な商品選択の機会の確保。食品表示法に基づく食品表示基準で義務表示事項などの具体的な表示ルールが定められている。
ただ、現行法で容器包装上に行うことを定めている義務表示事項は、「文字が小さくて見にくい」、「表示事項が多すぎる」などと見にくさへの不満が消費者から上がっており、今後、消費者ニーズの多様化に則した食品表示の充実化も求められる中で、これ以上表示が増えるとさらに表示が見にくくなる問題があった。
こうした背景を踏まえて消費者委員会の食品表示部会は、昨年8月に取りまとめた「食品表示の全体像に関する報告書」で、科学的アプローチとウェブによる食品表示の検討を消費者庁に要請。これを受けて同庁は今月から、「アプリケーションを活用した食品表示実証調査事業」を行うことになった。
実証調査は来年1月末まで実施する。調査を通じて容器包装上の食品表示をデジタルツールで代替することが技術的に可能かどうか、また、消費者の意向はどうか──などを探る。その上で、食品表示のデジタル化に向けた検討を引き続き進め、「将来的にはデジタルツールを活用した分かりやすく利活用される食品表示とする」考えだ。
実証調査を担当するのは同庁の食品表示企画課で、NTTデータ経営研究所に事業委託して実施する。調査用の食品表示データベースとスマホアプリを構築した上で、都内2カ所や、徳島県1カ所のイオングループのスーパーマーケット店頭で消費者モニターを対象に調査を進める。
食品メーカー23社が調査に協力し、調査に使用する食品表示データを提供。同庁らは、提供された原材料や食品添加物、栄養成分、原産国などの食品表示データを基に、データベースとスマホアプリを構築。アプリには、見たい食品表示事項の並べ替え機能▽1日あたりの食事摂取基準に対する栄養成分の割合の比較機能▽アレルギー物質のアラート機能▽類似商品の提案機能──といった便利な機能を搭載する。商品のバーコードをスキャンした上で各種データをアプリで表示する仕組み。
調査に協力する企業は、アサヒグループ食品、イオントップバリュ、味の素、キユーピー、日本水産、ハウス食品、ピジョン、明治、森永乳業──など食品大手23社。調査対象商品は、冷凍食品、即席めん、チルド食品、マヨネーズ・ドレッシング、ベビーフード──などで、サプリメント等は含まれない。
【写真=専用アプリを構築 便利な機能搭載(イメージ図)】