調剤・DgS、20年のM&A動向 (2021.1.28)


 2020年(1~12月)の調剤薬局・ドラッグストア業界におけるM&A発表件数は、前年比4件減の19件で、2011年以降の10年間では昨年の23件に次ぐ2番目の水準だったことが、M&A仲介ストライク(東京都千代田区、M&A Online)の調べで分かった。全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)を集計した。

 20年のM&A発表件数は前年比で減少したものの、100億円超の超大型案件が2件あったため取引総額は1101億円に達し、この10年間では最高となった。M&Aは件数、金額ともに好調を維持しているといえ、新型コロナウイルス感染症の拡大にもかかわらず業績が堅調な調剤薬局・ドラッグストア業界の勢いをそのまま反映した形といえそうだ。

 同社の調べで20年の取引金額トップは、総合メディカルホールディングスが2月5日にMBO(経営陣による買収)を実施すると発表した案件。経営陣の要請を受け、投資会社のポラリス・キャピタル・グループ(東京都千代田区)が総合メディカルHDに対して最大約763億円のTOB(株式公開買い付け)を実施し、全株取得による株式の非公開化を目指したもの。

 総合メディカルは、1978年に創業者で元社長の小山田浩定相談役らが設立し、医療機関に対する医療機器のリースやコンサルティング業務を主力に事業を展開。調剤薬局事業も柱の一つに育っている。2001年には東証一部に上場。しかし、中長期的に企業価値を保持・育成するためには、機動的な意思決定を可能にする経営体制の構築が望ましいと判断し、非公開化に踏み切った。

 取引金額の2位は9月10日にキリン堂ホールディングスが、同じくMBOによって株式を非公開化すると発表した案件。現経営陣の要請により米投資ファンドのベインキャピタルがキリン堂HDに最大約338億円のTOBを実施。ドラッグストア業界の長期的な成長が鈍化する中、短期的な業績変動にとらわれず、事業構造改革に向けて機動的かつ柔軟な意思決定を実現するのが狙いとみられる。

 キリン堂HDは近畿地区を中心に約370店舗を展開する中堅ドラッグストア。創業は1958年。2004年に東証一部に上場。2014年に持ち株会社制に移行した。これら以外の17件の案件は、すべて金額が非公表だった。

 企業別にみると、最も多くM&Aを実施したのは、国内ドラッグストア業界7位のココカラファインの8件。前年の2件から大幅に伸ばした。次に多かったのは業界最大手のウエルシアホールディングスと業界2位のツルハホールディングスの3件。両社とも前年より1件増えた。



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