消費者庁 コロナ予防 標榜広告減らず(2021.2.25)


 新型コロナウイルスの予防効果を標ぼうする商品のインターネット広告がふたたび増加傾向にあるようだ。2度目の緊急事態宣言の発令が背景にあるとみられる。表示監視を担う消費者庁は緊急監視を実施し、都合4度目となる表示改善要請の実態をこのほど公表した。同庁と連携する形で消費者への注意喚起を行ってきた国立健康・栄養研究所も、新型コロナ予防効果が標ぼうされている健康食品素材の科学的根拠調べに余念がない。

優良誤認のおそれ
 健康食品などについて新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうしていたとして、消費者庁は今年1月以降2月19日までに、計45事業者42商品・役務に対して表示改善を要請(指導)したことが分かった。商品に感染予防効果があると消費者が誤認し、誤った対応を行ってしまうことを未然に防止するため、緊急監視を実施していた。景品表示法、健康増進法で禁じる優良誤認、食品の虚偽・誇大表示に当たるおそれが高いと判断した。

 消費者庁が2月19日に発表した。表示改善を要請した商品・役務の内訳は、健康食品が32事業者32商品、マイナスイオン発生器が6事業者3商品、除菌スプレーが3事業者3商品──などと健康食品が最多。ウイルスの分解を標ぼうする建材や、コロナ対策をうたうシャンプーサービス、抗ウイルス加工マットレスなどについても、表示の改善を指導した。

 健康食品については、「コロナ新習慣、自然免疫をサポートする成分LPSを配合したサプリ、感染による重症化を防ぐ効果や感染力を低下させる効果」▽「コロナウイルスに勝つためには、今大事なのは免疫力アップ、免疫機能を正常に保つDHA・EPA」▽「白樺キノコ(チャーガ)をベースにしたコロナウイルスの治療法を発見」──などといった表示に対して改善を求めたとしている。

 新型コロナに対する予防効果を標ぼうする商品の広告に対して同庁は、「現段階においては客観性および合理性を欠くおそれがある」との認識を示している。新型コロナは現状、「性状特性が必ずしも明らかではない」、かつ「民間施設での試験等の実施も困難」であるためだとする。

 消費者および食品安全を担当する井上内閣府特命担当大臣は、消費者庁の発表に先立ち、2月19日午前に行った記者会見の中で、新型コロナ予防効果を標ぼうする事業者や商品に対して、「緊急時の国民の不安に乗じた悪質なもの」だとして批判。厳正に対処する方針を示した。また、表示改善要請件数が最も多かった健康食品について、「新型コロナウイルスへの効果を実証することは事実上不可能だと聞いている」などと踏み込む形で述べ、厳しく取り締まりたい考えを示唆した。

4度目の注意喚起
 消費者庁は、新型コロナウイルス感染拡大が社会に大きな影響を与え始めた昨年2月以降、新型コロナに対する予防効果を標ぼうするインターネット広告を巡る緊急監視を開始。改善要請件数や改善を要請した表示事例の公表の他、消費者への注意喚起を繰り返してきた。

 今回の発表は第4報にあたる。健康食品に関する表示改善要請件数は、累計で113事業者133商品に上り、他の分野の商品や役務を大きく引き離している。新型コロナ予防効果を標ぼうするインターネット広告に対する同庁の監視の目が、健康食品に集中していることを示唆すると言えそうだ。

 健康食品に関しては、景表法に基づく措置命令など行政処分に至る事案は発生していないものの、警察が医薬品医療機器等法違反(未承認医薬品の販売など)で取り締まる事件は昨年来多発している。行政処分も時間の問題である可能性が無視できない。

 表示を取り締まる同庁表示対策課によると、新型コロナ予防効果を標ぼうするインターネット広告は昨夏以降、減少傾向を見せていた。ただ、二度目の緊急事態宣言の発令を境にふたたび増加に転じたとみられるという。

 一方、国立健康・栄養研究所も、同庁の取り締まり活動と連動した注意喚起活動を続けている。新型コロナ予防効果がネット広告等で標ぼうされている健康食品素材の科学的根拠を調査した上で、そうした「報告は見当たらない」などと断じた素材の数は、2月19日時点で累計38にのぼる。

 同研究所では、「現時点で新型コロナウイルス感染症に対する予防効果が確認された食品・素材の情報は見当たりません」と強調。また、「いくつかの食品・素材においては新型コロナウイルス感染症に対する予防効果が検討されていますが、現時点ではいずれも予備的な検討であり、科学的根拠を示すまでには至っていない」として、冷静な判断を消費者に呼び掛けている。


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