分析料金「2倍」なぜ Q&A改正で新「要求事項」 (2021.6.10)
Q&A改正で新「要求事項」 分析法の妥当性確認を追加
消費者庁登録試験機関の日本食品分析センター(本部・東京)が、機能性表示食品の届出を目的に依頼された分析試験の料金を条件付きで引き上げる。
機能性表示食品の分析に関する要求事項が増えたのに伴い、新たな確認事項が生じることに合わせて料金を見直す。通常の試験料金に加えて「試験料金と同額を加算」することを6月1日、公表した。料金が2倍に跳ね上がることになる。
ただ、同センターは取材に、新たな確認事項に関する試験は不要だと依頼者が判断した場合は、通常料金のみとする考えを述べた。依頼者の意向を尊重するという。
日本食品分析センターは5月10日から、機能性表示食品の届出を目的にした分析試験の依頼について、追加資料を提供できるよう検討していることをアナウンスしていた。
追加資料を提供するための試験を別途実施する必要があることから、それを求める依頼者には、通常の試験料金に加えて試験料金と同額を加算して請求することにした。
追加資料を提供する必要があるのは何故か。同センターでは、その理由として、今年3月の届出ガイドライン改正と同時に行われたQ&A(質疑応答集)改正で新たに設けられた設問「問32」を挙げている。「分析方法を示す資料を作成する際に留意すべき事項は何か」という項目だ。
機能性関与成分の分析や分析資料に求められる事項を示したこの設問の回答では、「全届出共通事項」として5つの事項を提示。その1つとして「(分析方法について)公定法などがない場合は、表示量付近での添加回収試験や繰り返し分析等を実施し、分析方法の妥当性確認を行うことが望ましい」とする考え方が示されている。
同センター担当者によると、5つの事項のうち4つは以前から対応していたものの、「妥当性確認」は新たな要求事項だった。
そのため、機能性表示食品の届出を目的に依頼された分析試験について、新たな要求事項に合わせ、通常の分析試験方法に加えて新たな試験を実施し、依頼者に追加資料を提供することを検討。そして、「要求事項を満たす妥当性確認の最小限の内容」として「3回の繰り返し試験を実施」し、「それらの分析結果とばらつきの指標となる標準偏差及び相対標準偏差」に関する資料を提出資料に追加することにした。
そうした事情で試験料金を見直し、通常の試験料金に加えて、試験料金と同額を加算する。通常の分析試験料金は、成分によって1~10万円以上まで差があるが、例えば、通常4万円であれば単純計算で8万円になる。「これまでの通りの料金では対応できない」と同センターの担当者は述べ、理解を求める。
加えて、試験に要する期間が通常より長くなる。「通常試験期間+2営業日が目安」だとしており、料金もさることながら、試験期間の延長も事業者にとって小さくない課題になる。ある事業者は「最近はただでさえ分析結果が出るまでの期間が伸びている。その上でさらに2営業日が追加とは。届出に影響する」と語る。
「依頼者が望むなら」
もっとも、同センター担当者は取材に、繰り返し試験の実施などは、依頼者がそれを望む場合に限るとの考えを述べている。望まないのであれば料金も試験期間も通常と変わらない。逆に、「3回の繰り返し試験というのはあくまでも最小限。信頼性を高めるためにもっと回数を増やして欲しいという依頼があれば、そのぶん料金も上がることになるが、対応する」という。
機能性表示食品を製造したり販売したりする事業者には、機能性に関するエビデンスが得られたのと同じ量の機能性関与成分を摂取できる商品を消費者に提供し続けることが求められる。
そのために、分析方法の妥当性確認も依頼するべきかどうか。事後に不備を指摘されるリスクを回避したいのであれば確認しておくほうが安全だが、コストに絡む話でもあるため判断に悩む事業者も出てきそうだ。
Q&Aの書きぶりは曖昧で、それをすることが「望ましい」とぼやかし、届出者や業界に判断を大きく委ねている。ただ、機能性表示食品の製造・品質管理に対する要求が今後高まることが予想される中では、避けて通れないと考えられる。
【写真=新たな試験料金などを伝える日本食品分析センターのホームページ】