消費者庁 予防標ぼうに「待った」 (2021.7.8)


表示改善要請、5回目の公表
 新型コロナウイルスの予防効果を標ぼうする健康食品の広告表示への監視を消費者庁が引き続き強めている。これまでに繰り返し行ってきた消費者への注意喚起を先月末も実施。併せて、40以上の事業者に対し、表示改善を指導(要請)したことを公表した。今回、同庁が改善を求めた広告表示には、研究機関が細胞試験に基づく新型コロナウイルス不活化機能を最近報告している5‐ALA(5‐アミノレブリン酸)に言及したものも含まれる。

 消費者庁は3回目の緊急事態宣言が発令された今年4月以降、昨年から断続的に行ってきた「緊急監視」をあらためて実施。そのなかで、6月25日までに、43事業者がインターネット上で販売していた49商品に関して、広告表示の改善を要請したことを発表した。併せて、広告表示を過信しないよう求める消費者への注意喚起も行った。

 49商品は全て健康食品。緊急監視は、インターネット上で新型コロナに対する予防効果を標ぼうする健康食品などの広告を、景品表示法と健康増進法の観点から監視するものだ。

 消費者庁では、改善を求めた健康食品49商品の広告表示について、優良誤認表示や食品の虚偽・誇大表示に違反するおそれが高いと判断したとみられる。改善要請は、そうした不当表示の速やかな排除を念頭に、「緊急的措置」として行っているもの。要請後、景表法等に基づく行政処分の執行を視野に入れた本格的な調査を進めている可能性もある。

 消費者庁では、新型コロナ感染拡大が社会問題化し始めた昨年2月から緊急監視を断続的に実施している。今回も含め、広告表示改善要請の公表は5回を数える。広告表示改善要請件数としては、健康食品に関してのみで累計156事業者190商品に達している。

 一連の表示に対して消費者庁では、「一般消費者が当該商品の効果について著しく優良等であるものと誤認し、新型コロナウイルスの感染予防について誤った対応をしてしまう」と懸念。「根拠のない商品」に注意するよう消費者に求めている。

 一方で、ここにきて国内大学等の研究機関が、食品成分による新型コロナウイルスの不活化機能を報告する動きが相次いでいる。いずれも細胞試験に基づくものだが、社会的関心は高く、そうした成分の含有を強く訴求する健康食品の広告表示も見られるようになっている。ここにきて消費者庁では、そうした表示への監視を強めている様子だ。

 実際、消費者庁が今年4月以降に改善を求めた健康食品の広告表示には、今年2月、長崎大学らの研究グループが新型コロナウイルスの不活化機能を論文発表した5‐ALAに言及したものが含まれる。「新型コロナウイルスの増殖を抑制する5‐ALA」、「○○大学が5‐ALAによる新型コロナウイルス感染症原因ウイルスの増殖を阻害するとの研究結果を発表」などといった表示に対して改善を要請した。

 また、奈良県立医科大学の研究グループが昨年9月に新型コロナウイルスの不活化機能を発表した柿タンニンを巡る広告表示に対しても改善を要請。さらに、国内の栄養系大学に関係する研究機関が昨年12月、「緊急使用を推奨」する旨の文章をホームページ上に掲載したラクトフェリンに言及する広告表示にも改善を要請した。ちなみにこの文章は、同研究所のホームページ上に現在も残されている。

 人に対する有効性は明確ではないにせよ、新型コロナに対して機能する可能性が示唆される食品成分が複数見出されている。しかし同庁では「いずれも試験管内での実験結果」だと一刀両断。「新型コロナ予防に根拠のあるサプリメントや特定の食品はありません」と断じている。

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