市販サプリで機能性検証 新型コロナ重症化抑制が示唆 (2021.7.29)
高吸収ケルセチン製剤
イタリアのインデナ社(ミラノ)が製造・販売するエンジュ花を原料とした高吸収ケルセチン製剤『ケルセフィット』に、新型コロナウイルス感染症(Covid‐19)の重症化を著しく抑える可能性のあることを報告する査読付き学術論文2報が先月、海外誌に掲載された。これらの論文は、新型コロナウイルス陽性者(重症者除く)を被験者とし、パキスタンで実施された非盲検RCT(ランダム化比較試験)の結果を伝えたもの。被験物としては、ケルセフィットを配合した市販(海外のみ)のサプリメントが使用された。
海外でRCT 論文2報
論文は、2報とも、海外の薬系学術誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・ジェネラル・メディシン」(ドーブ・プレス社)に先月末までに掲載。パキスタンで実施された2つの非盲検RCTの結果を個別に伝えた。インデナ社の日本法人インデナジャパン(東京都千代田区)によると、現在、第3弾のRCTが進んでいる。
論文によると、第1弾、第2弾のRCTは、昨年9月から今年3月にかけて、パキスタン国内で進められた。試験を主導したのは、同国のリアクアット医科健康科学大学や英国のオックスフォード大学など。インデナ社らの企業も関与している。
第1弾の非盲検RCTは、新型コロナウイルス陽性患者(重症患者を除く外来患者に限定)の男女152名(平均年齢49歳)を被験者にして実施。消炎鎮痛剤や抗生物質などを用いた標準治療に加え、ケルセフィットを1粒あたり500㍉㌘含むサプリメントを1日2錠(=1000㍉㌘)摂取した群は、標準治療のみの群と比較し、重症化が顕著に抑えられたという。
具体的には、入院に至った患者数について、標準治療群は22名だったのに対し、ケルセフィット群は7名と有意に少なかった。また、▽入院患者の平均入院日数▽酸素吸入した患者数▽ICUに入った患者数についても、ケルセフィット群は標準治療群と比べて有意に少なかった。ICUでの治療が必要となった患者数はゼロ(標準治療群8名)、死亡者数もゼロ(同3名)だったという。
一方、第2弾の非盲検RCTは、現在進行中の第3弾RCTの「予備試験」として実施されたもの。被験者の属性など試験概要は第1弾とほぼ同様。被験者数は42名と少ないが、試験開始7日後の時点で第1弾と同様の結果が認められた他(ただし、ケルセフィット摂取量は1日あたり1500㍉㌘)、PCR検査で陽性から陰性に変わる期間が、標準治療群よりも有意に短縮した。
また、血液検査では、CRPを始めLDH、フェリチンなどといったいわゆる「重症化マーカー」について、一部で有意な減少、一部で減少傾向が認められたという。
インデナジャパンによると、第3弾RCTは、第2弾とほぼ同じ試験プロトコルで、被験者数を約3倍に増やし、パキスタンのキングエドワード医科大学病院で進められているという。
ウイルス巡る機能 以前から研究報告
ケルセチンはフラボノイドの一種。その摂取によって新型コロナウイルス感染症の重症化が抑えられたのはなぜか。
インデナジャパンでは、ケルセチンについて、「風邪やインフルエンザ、SARSCoVなど、様ざまなウイルスに効果的であることが以前から研究・報告されていて、『広域スペクトル抗ウイルス薬』(Broad-Spectrum Antivital)とも呼ばれている」と解説する。
そうしたバックグランドを背景に、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受け、ケルセチンの抗ウイルス機能をめぐる研究が進展した面もあるようだ。例えば、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質にケルセチンが結合し、ウイルスの働きを阻害する可能性のあることを伝える論文が昨年、発表されている。
そのような新たな知見を受けてか、米国の医科大学の一部では、新型コロナ陽性者(軽症者)に対し、ビタミンCやDなどにケルセチンなどを組み合わせた製剤の摂取を推奨しているらしい。
また、インデナジャパンの調べによると、昨年来、ケルセチンの新型コロナウイルスに対する有効性を検証する臨床試験が各国で計画、実施されているという。そのうちの一つが、今回、2つの論文を通じて結果が報告された、インデナ社のケルセフィットの有効性を検証したパキスタンでの非盲検RCTだ。
ただ、インデナ社では、ケルセチンの水溶性は低く、そのためケルセチンそのものの生体吸収性は低い、と指摘する。そのためケルセフィットでは、同社独自の加工技術を活用し、ケルセチンの経口吸収性を最大20倍まで高めているという。
アフター・コロナ重症化抑制に意義
新型コロナ感染症に対する、ケルセフィットの有効性を報告した今回の論文は、新型コロナウイルス「感染予防」機能を示唆するようなものではない。
ただ、海外の一部では、新型コロナの新規感染者数の増加が続くなか、規制を完全撤廃し、ウイルスとの本格的な「共生」に舵を切る動きがみられる。日本でも、ワクチンの普及が進むのに合わせ、そうした海外諸国と同じ道を歩みはじめることになるだろう。その時、ケルセフィットについて今回報告されたような重症化を抑える働きを持つ薬剤、あるいは食品素材は、社会的に重要な役割を果たすことになるかもしれない。
インデナジャパンでは次のように話している。
「ケルセフィットは食品であって、医薬品のような反作用がないことも(研究結果から)はっきりしている。今回の論文の中身を日本の専門家にしっかり検証してもらいたい。その上で、一定のエビデンスがあると判断されるのであれば、どんどん活用していってもらいたい」