食品の機能性表示解禁へ 消費者庁検討会が報告書案(2014.7.24)

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 健康食品を含む食品の機能性表示が今年度中に実現する。消費者庁の「食品の新たな機能性表示に関する検討会」(松澤佑次座長・大阪大学名誉教授)は18日、最終製品ではヒト試験の実施、機能性成分ではシステマティック・レビュー(SR)で肯定的な結果が得られたものについて、機能性表示を認めるとする報告書案をとりまとめた。近日中に最終報告書が公表される。機能性表示制度は、昨年6月に閣議決定した規制改革実施計画通りのスケジュールで実現の運びとなった。

第3の食品表示制度

 報告書案は、新制度は国が許可する特定保健用食品(トクホ)、国が成分の基準などを示す栄養機能食品とは別のものとして規定し、安全性や機能性に係る科学的根拠等について、一定の基準を満たした製品に企業等の責任において機能性表示を認める。また、適切な情報提供を行い消費者の理解増進や、国として健康被害情報の収集体制の整備、消費者庁へ製品の事前登録を義務付けるなどの管理を徹底する。

 最重要項目の一つである安全性の確保では、機能に関与する成分(機能性関与成分)の過剰摂取の観点から、成分が定性的かつ定量的に明らかにされていることが必要だと指摘。具体的には全国規模など広範囲の摂取集団においての食経験情報での評価や、食経験では不十分な場合、トクホを参考にした安全性試験の実施を求めた。ほかにも医薬品との相互作用の有無の確認を求めている。

 また、品質管理では現行の食品衛生法に基づく基準等の遵守を求める以外に、HACCP、ISO22000、FSSC22000、GMP(適正製造規範)などに基づく工程管理を、企業が自主的かつ積極的に取組むべきものとして位置付けることが適当とした。特にサプリメント形状ではGMPに基づく製品管理が強く望まれるとするなど、より強い表現にしている。

 さらに、容器包装に摂取方法や機能性関与成分の含有量の記載、摂取注意情報や国の審査を受けたものではないとの免責表示などを行い、消費者への情報提供を求めている。

成分はSRが必須に

 一方、機能性の科学的根拠の考え方では、最終製品を用いた臨床試験の実施、または最終製品もしくは機能性関与成分に関する研究レビューを企業等で行うことが適当とした。

 このうち臨床試験はトクホに準じた試験の実施を適当とし、さらに研究計画の事前登録(UMIN臨床試験登録等)や、国際的にコンセンサスが得られた指針(CONSORT声明等)に準拠した形式で査読付き論文により報告されることが適当であるとしている。

 また、機能性関与成分が対象になる研究レビューでは、レビューに係る成分と最終製品の成分との同等性の考察、査読付き学術論文など、広く入手可能な文献を用いたSRを必須とし、総合的観点(トータリティ・オブ・エビデンス)の観点から肯定的と判断された機能であることなどを条件づける。さらにSRの実施者は問わないが、レビュー結果の責任は最終製品に係る企業等が負うことが適当とした。

 一方、表示の範囲などでは、対象食品を食品全般とするが、アルコール含有飲料やナトリウム、糖分を過剰に摂取させることになる食品は対象としない。対象成分は作用機序が考察されているもので、直接的または間接的に定量可能な成分が適当であるとした。ただし、厚生労働省の食事摂取基準で摂取基準が策定されている栄養成分(ビタミンやミネラルなど)については「食事摂取基準と異なる成分量及び機能で消費者への摂取を推進することは、健康・栄養政策との整合が図られない恐れがある」と否定的見解を示す一方、今後さらに慎重な検討が必要であるとも付け加えた。

 なお、産業側委員から要望があった、機能性成分が明確でないものについても、制度の運用状況を踏まえて検討するとの一文が加えられ、対象となる可能性が残った。

構造機能表示解禁へ

 また、薬事法の観点から懸案となっていた部位などの構造機能に関する表示については、「身体の特定の部位に言及した表現を行うことも可能とすることが適当」との文言を加え、事実上解禁されることになった。薬事法では身体の構造機能に影響を及ぼすことが目的とされている物は医薬品に該当し、食品などでは一部例外を除き、構造機能に関する表示を認めていない。新制度では「目」や「膝」といった部位のほか、「免疫」「疲労」などといった文言についても、直ちに薬事法に抵触しないとの判断が用いられることになる。

 一方で、疾病の治療効果や予防などの暗示や、「肉体改造」など意図的な健康の増強を標ぼうする表現は薬事法の規制対象になることに留意すべきとした。このほか疾病リスク低減など疾病名を含む表示は医薬品やトクホとして慎重に取扱うべきとした。

 対象者についても、生活習慣病や疾病に既に罹患している人、未成年者や妊産婦、授乳婦に訴求するような製品の開発や販売促進等は行わないことが適当とした。

ガイドラインが鍵握る

 ただ、制度の詳細については多くを指針(ガイドライン)で示す内容になっており、今後、関係者などの意見を聞きつつ、同庁がどのような内容にするか注目される。なお、ガイドライン公表の時期はいまのところ不明だが「施行に合わせ事業者が困らないような時期に」(食品表示企画課)示す考えを明かしている。

 なお、この日の議論を反映させた報告書は今月中にも公表し、その後、同庁で食品表示基準に盛り込む条文案を作成、パブリックコメント募集、消費者委員会への意見聴取などの手続きが行われる予定。同時にガイドラインの策定作業も進め、来年3月までに制度が施行される見通し。

【写真は7月18日の消費者庁「食品の新たな機能性表示に関する検討会」】

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