ハラール認証取得じわり 東南アジア取り込みへ(2014.9.25)
2030年に世界人口22億人に達すると予想されているイスラム教徒(ムスリム)向けの市場を指す、ハラールマーケットが話題だ。中国との間で尖閣諸島問題が発生して以降、ムスリムを多く抱える東南アジア諸国の需要を取り込む動きが日本でも活発化している。健康食品業界の動きはどうか。現状と今後を探った。
ハラール(Halal)とは、アラビア語で「許されたもの」や「合法的なもの」の意味だ。イスラム教の聖典「コーラン」を社会生活に適用するために体系化したイスラム法(シャリーア)において合法とみなされるものがハラール。反対に不法とみなされたものはハラームと呼び、代表的なハラームとしては豚や酒が知られる。
ハラールを生活規範とするムスリムの人口は、10年時点で世界人口の20%以上に相当する16億人、このうち半数以上がアジア太平洋地域に住んでいると言われる。ムスリムを最も多く抱えている国はインドネシアで、総人口2億5000万人のうち8割以上に相当する2億人強。マレーシアでも人口の6割以上をムスリムが占め、仏教国のタイでも、特に南部には多くのムスリムが住むと言う。
こうした経済発展が見込まれ、若年層人口も多いアジアのイスラム市場に参入するにはハラールへの対応が求められ、製品やサービスが、イスラム法上で許されたものかどうかを宗教機関などの第三者機関が証明するのが「ハラール認証」システムだ。輸出、販売するために同認証取得が制度上必須というわけではないが、実際には現地の取引先企業が認証取得を要請する場合も多く、イスラム市場への「通行手形」などと言われている。
高齢者を多く抱える日本の健康食品は内需型産業と言え、業界全体でみると輸出の動きはまだまだ鈍い。このため、ハラール認証を取得した最終製品も少ないが、国内市場の将来を見据え、グローバル展開を進める一部の販社はじめ原料事業者や受託製造企業のあいだでは、それに対応する動きが少しずつ広がりを見せている。イスラム市場に以前から進出している欧米の原料企業による取得件数にはまだまだ及ばないが、ここ1~2年で顕著に増えている。ハラール対応最終製品製造ラインを持つ受託製造工場は現時点ではかなり限られているが、以前に比べると、イスラム市場に日本製サプリメントを輸出しやすい環境が形成されつつある。
ハラールはムスリムに共通の規範だが、ハラール認証には統一規格が現状存在せず、各国の認証機関が独自に認証を行っている。このため、輸出国ごとに認証を取得する必要があるのだが、日本にもハラール認証機関は存在する。輸出向けの認証機関としては、マレーシアの首相府直轄でハラール認証を行うJAKIMの海外公認機関となっている宗教法人日本ムスリム協会や、NPO日本ハラール協会が有名だ。日本ムスリム協会は、インドネシアの認証団体MUIからの公認も得ていることもあり、国内事業者はここから認証を取得するケースが目立つ。
一方で、ハラール認証を取得するのは容易ではない。原材料や製造工程の詳細について情報開示が求められ、ハラームが含まれないかを確認する必要があるほか、何より、日本とは文化背景が大きく異なるイスラム教を十分理解しなければならない。「正直、そこまでしなければならないのかと面食らった」と、これまでに食品安全に関する認証を複数取得してきた企業担当者は話しており、ハラール認証を取得するには相当の覚悟が求められることになると言えそうだ。
だが、認証取得のハードルが高いからこそ強い商機があるとも言える。ほかの認証と同様、ハラール認証を取得することで売上が増すと言い切れないのは事実だが、少なくとも健康食品原料に関しては、現地企業との取引が活発化した様子が窺われる。また、親日国の多い東南アジアでは、「メイド・イン・ジャパン」製品に対する評価が高く、サプリメントに関しても「日本で販売されている商品と同じものを求めている」という見方もある。そこにハラール認証が加われば、将来的には、現地で主流の輸入品サプリメントを凌駕し、市場を拡大できる可能性もありそうだ。