DSMニュートリションジャパン 佐次本英行氏(2014.10.9)

インタビュー_DSM佐次本本部長

【機能性表示戦略インタビュー】素早い対応で制度普及図る ルテイン、根拠情報の提供体制構築
DSMニュートリションジャパン 佐次本英行・ヒューマンニュートリション本部本部長

 サプリメント原料の販売をグローバル市場で展開するDSMが機能性表示制度に対する対応方針を固めた。ガイドラインの公表を待たずして戦略を語る狙いは何か。ヒューマンニュートリション事業本部の佐次本英行本部長に話を聞いた。(聞き手=本紙記者・石川太郎)

──DSMは日本の機能性表示制度をどう見ているのでしょうか。

 「米国で機能性表示が始まった後に市場が拡大した例もあり、本社の期待は大きい。しかし日本のヒューマンニュートリション事業を預かる私の立場からしてみると、予断を許さない。健康食品に限らず、消費増税後は一般コンシューマーの消費意欲が落ちている。機能性表示制度が始まる来年3月末までには次の消費増税も決まっているだろう。新制度を消費拡大のチャンスとして活用していきたいが、まずはコンシューマーが何を求めているのかを正確に把握する必要がある」

──ビタミン類は対象外となりそうです。どのように考えていますか。

 「これまで通り政府に対して働きかけを行っていく。世界で唯一13種類のビタミンを取り扱うDSMの使命だ」

──新制度に向けた準備状況を教えて下さい。

 「施行は来年3月末までと閣議決定されているが、すでに10月だ。機能性と安全性が担保された素材を使った製品を市場に出せる状況を制度施行までにつくりあげるためにいま現在最低限やっておかなければならないことは、そうした素材の選定だろう。この限られた時間の中で機能性表示を行える製品を仕上げると決めた企業に対し、機能性や安全性をスピーディに評価できるよう、各種論文の概要、そこから導き出される機能性に関する結論、食経験など安全性データ、海外での機能性表示例など、システマティック・レビューに必要な情報を、その結果に近いところまでも含めて提供できる体制づくりを進めている」

 「時間をかけて対応すると考える企業もあるだろうが、タイムリーに対応することで先行者利益を得られるはずだ。DSMの取扱素材の中で情報量とその提供体制が最も充実しているのはルテイン。ルテインで機能性表示を行ってもらうことで、新制度の普及と活性化を支えていきたい。他にもEFSA(欧州食品安全機関)に健康強調表示を許可された素材がある。オート麦由来βグルカンの『オートウェル』やトマトエキスの『フルーツフロー』などがそうだが、これらについても提供情報はまとまりつつある」

──DSMはオメガ3も取り扱っています。機能性表示で有望素材だと思いますが、ルテインに力を入れているのはなぜでしょうか。

 「ルテインが最も有望な素材のひとつであると考えている。ケミン社とともにグローバルでマーケットを広げてきたが、新制度によって、日本でさらに大きく成長させられると考えている。勿論、オメガ3にも力を入れる」

 「ルテインの論文数はおよそ1000報を数え、海外では『AREDS2』などの大規模臨床研究も行われている。これらの論文や研究が結論しているのは、加齢黄斑変性など加齢性眼疾患領域における機能だ。それに基づき米国では、〝年齢とともに減少する黄斑色素量を維持するのを助ける〟や〝視機能と視覚の質を向上させるのを助ける〟などといった構造機能表示が行われている。韓国では〝黄斑密度を上昇させ眼の健康を助けます〟という表示を国として許可した。こうした海外の表示例は、日本の機能性表示制度でもヒントになるはずだ」

──ルテイン原料「フローラGLO」は多くの機能性研究がなされています。一方で、その研究論文はほかのルテイン原料でも活用できるかも知れません。

 「個人的見解だが、それでも構わないと思っている。『フローラGLO』はほかにはない価値を提供している。まずは日本でルテイン市場、我々は〝アイ・ヘルス(EYE HEALTH)市場〟と呼んでいるが、それを拡大させることが重要であり、長期的に見れば、リターンは必ずある」

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