健食消費の行方は 各種調査 数字奮わず懸念(2014.10.9)


 内閣府が7日発表した8月の景気動向指数速報値で、景気の現状を示す指数は前月比1.4ポイント減と2カ月ぶりに下降し、景気の基調判断は「下方への局面変化を示している」と4カ月ぶりに下方修正された。消費増税に伴う駆け込み需要の反動が続いていることが影響していると見られるが、健康食品の消費もいまひとつ。1997年、前回消費増税時の駆け込み需要の大きさと比べると今回は僅かだったにもかかわらず、回復の動きが鈍いのが気がかりだ。

 健康食品通販の有力企業を含む会員企業145社を対象にした日本通信販売協会の通販売上高月次調査。健康食品の売上高は、4月から7月までの4カ月連続で前年同月実績を下回った。減少率も小さいとは言えない状況が続いている。

 消費税が引き上げられた4月の健康食品売上高は前年同月比16.2%減。この調査ではほかにも衣料品、家庭用品、文具・事務用品、化粧品なども調査対象商品となっているが、減少率が最も大きかったのは、「その他」商品を除くと、健康食品。4月以降の増減率を見ると、5月は9.5%減、6月は8.3%減、7月は8.5%減と、10%に近いマイナス幅で推移している。

 総務省統計局が毎月発表している「家計調査報告(二人以上世帯)」でも、健康保持用摂取品(健康増進のために用いるサプリメント形状の食品、以下サプリ)の支出額は4月以降、5カ月連続のマイナスとなっている。

 4月のサプリ支出額(用途分類、以下同)は1107円で、前年同下比は名目15.0%減と大幅減。5月は21.3%減(支出額967円)とさらに減少率が拡大するとともに、1000円を割り込んだ。6月は5.7%減(1155円)と回復傾向を見せたものの、7月は一転、20%減(1095円)と大きく悪化した。

 また、先月30日に発表された最新統計の8月分については7.9%減の支出額1161円。支出額は4月以来最高となった一方で、サプリ支出額が多いと考えられる無職世帯が18.5%減(1672円)と、前の月の7.7%減(1505円)との比較で大幅減となった。

 いずれの調査でも、消費税引き上げ直前の3月の数字は大きく拡大しており、駆け込み需要のあったことを如実に物語っている。

 家計調査報告の3月のサプリ支出額は1273円、前年同月比は13.2%増と、前月の11.8%減から大きく拡大に転じた。一方、通販協の月次調査で3月の健康食品売上高は、16.3%増の200億8100万円と10カ月ぶりの増加となっていた。

 また、今年1月から調査が始まったため前年同月比較はできないが、経済産業省の「専門量販店販売統計」でも、ドラッグストアでの3月の健康食品販売額は172億円と、前の月の133億から約40億円のプラスだった。

買い控え 長引く可能性

 一方で、97年の前回増税時の駆け込み需要と比べると、今回の伸びは実は顕著に小さいものとなっている。

 別掲の図表上は、家計調査報告の96年1月から98年12月のサプリ支出額(品目分類)と、13年1月から14年8月までのそれを比較したものだ。97年3月の増税前仮需要(駆け込み需要)は業界が意識的に消費者に働きかけて仮需要を創出したこともあり、前年同月比68.9%増と大きく拡大。今回と比較すると50ポイント以上もの開きがあり、背景には、健康食品の主要販売チャネルが訪問販売から通信販売に移ったことがあると見られる。

 97年の増税前仮需要は伸び率が大きかったこともあり、回復までに1年半以上の月日を要した。一方で今回はその伸びも僅かだったため、6月か7月に増加に転じても不思議はなかったが、前述の通り7月は減少幅が拡大した上、8月もマイナス。年間支出額が前年並みを維持できるかどうかは微妙なところとなっている。

 日銀が2日発表した9月の「生活意識に関するアンケート調査」によると、景気が1年前に比べて「良くなった」との回答から「悪くなった」を引いた景況感D.I.はマイナス20.4と前回調査(6月)以来2期連続で悪化。「ゆとりがなくなってきた」との回答も増加しており、その理由(複数回答)として最も多かったのは「物価が上がったから」(66.2%)であったという。

 健康食品の需要を支える高齢者も消費を抑えている可能性が高い。機能性表示が消費を再び喚起すると考えられるが、増税後の各種需要動向調査を踏まえると、それだけに頼るのは心許ないと言えそうだ。

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