〝血管健康〟広く取り込む Tie2フォーラム(2014.10.23)


 体中を巡る毛細血管の構造的安定化を誘導する役割を担う「Tie2(タイツー)」と呼ばれる受容体型酵素。その活性化は健康・美容に寄与するとして普及啓発や研究発表を行ってきた「Tie2フォーラム」は今年限りで終了、今後、研究会に発展する。リンパ管や血管の健康の概念も取り入れた研究会になる方向で、このほど200名を集めて都内で開催された最後のフォーラムも、その姿勢が反映される内容となった。

 研究会は今後、「Tie2・リンパ・血管研究会」の名称で近く正式に設立される。同フォーラムで講演を毎回行うなどして中心的役割を担っていた高倉信幸・大阪大学微生物病研究所教授らが設立発起人となる。

 17日に開催された第4回フォーラムで高倉教授は、「血管を正常化させる。良い薬剤や健康食品をつくったとしても病態部位に届かなければ効果はない。血管を正常化した場合の効果などをディスカッションする場にしたい」と今後の活動に向けた抱負を述べた。「Tie2を中心とした血管の正常化・成熟化による様々な病態改善の(ための)コンソーシアムができると考えている」と言う。

 Tie2は、毛細血管の内腔側の血管内皮細胞に発現する。これが血管の外側の壁細胞から分泌されるアンジオポエチン1と結合して機能活性すると、内皮細胞同士の接着を誘導したり、壁細胞と内皮細胞の接着を誘導したりすることで血管の構造的安定化に関与すると考えられている。

 毛細血管には体内の細胞や組織に酸素や栄養分を届ける役割がある一方で、老化によって血管同士の結びつきが弱まるなどして構造的破綻をきたすと、足のむくみや肌のシワなどの原因になるほか、組織や臓器の不全につながる場合も。そのため、Tie2の活性化は「抗老化に直結するものと考えられる」(高倉教授)と言う。

 これまでのフォーラムでは複数の取り扱い原料からTie2活性化作用を明らかにしている丸善製薬が研究報告を行うなどしてきた。今回のフォーラムでも、ヒハツエキスに認められた同作用について解説し、臨床試験で確認されている足のむくみ改善機能は同作用が関与している可能性があると報告。またその活性成分について、「一つではないのだろうが、ピペリン類である可能性が高い」とした。

 一方、今回のフォーラムには、Tie2活性作用から離れた形での血管の健康維持に関わる食品素材による機能性報告も盛り込まれた。報告したのはサントリーウエルネス健康科学研究所の小南優氏。同社が「地中海食」の健康効果に着目して配合製品を開発・発売しているオリーブ・ブドウ種子ポリフェノールの摂取に伴う循環器疾患予防機能の可能性について、被験者70名規模で行った臨床試験の結果も交えながら解説した。抗酸化・抗炎症機能を介し、血管最内層の血管内皮の機能改善に関与している可能性があるという。

 Tie2フォーラムは回を重ねるごとに聴講者が増えていた。業界にも少しずつ浸透していたと言え、今回のフォーラムでは、血流改善作用が認められていた黒大豆種皮エキスにTie2活性作用が確認されたとフジッコが発表。また、新知見の発表の場ともなっていた側面もあった。リンパ管機能改善に着目したTie2活性作用の研究に注力している資生堂の加治屋健太郎氏(新領域研究センター 食品応用研究グループ)が今回も登壇し、シベリアニンジンの同作用とむくみ改善効果を報告している。

Clip to Evernote

ページトップ