ガイドライン不在の年末 疑問抱えたまま年越しへ(2014.12.25)
食品の新たな機能性表示制度の詳細が示されることになることから多くの事業者が内容を早く知りたいガイドライン。閣議決定で定められた制度実施期限から逆算して年内の公表を予測する見方も強かったが、23日現在、動きはない。「機能性表示に振り回された1年」(原料事業者大手)はこのまま終わりを迎えることになりそうだ。
ガイドラインの公表時期は年明け1月となる公算が大きい。消費者庁の川口康裕次長は2日、健康雑誌「日経ヘルス」主催の機能性表示制度セミナーに登壇し、ガイドライン発出時期は来年「1月(予定)」だとするスライドを示した。
それまで消費者庁はガイドライン発出時期に関し「出来るだけ早く」などと説明するにとどめていたこともあり、川口次長が示したスライドは注目を集めた。
これを受け、業界内では現在、ガイドラインは来年1月「下旬」に発出される可能性が取り沙汰されている。
下旬の根拠は、1月中旬ごろに機能性表示制度を議題にした規制改革会議健康・医療ワーキンググループが開催されるという話があり、「はっきり分からないが、その前に公表されることはないのではないか」という見立てだ。
ただ、規制改革推進室によると、開催スケジュールや議題が公表されるのは原則、開催前日。そのため、1月中旬に同WGが実際に開催されるかどうかは公式には不明なのが実際のところだ。
機能性表示制度を協議する同WGの会合は、消費者庁から聞き取りを行う形で10月17日に開催されている。
この日の会合では、病者を被験者にした論文を機能性の根拠情報に含めるか否かの協議に多くの時間が割かれ、森下竜一・大阪大学院教授ら規制改革会議委員は含めても差支えないと主張。しかし消費者庁も引かず、「何か合意をしたという状況にはない」(内閣府参事官)まま終わり、引き続き消費者庁と協議を続けることになった。
ふたたび協議するための会合は、その後これまでのところ開催されていない。
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食品の新たな機能性表示制度の食品表示基準案を消費者庁が開示した今年8月末以降、事業者の多くが新制度対応に向けた動きを加速させた。
ただ、今年7月に公表された検討会報告書の内容や、説明会などでの消費者庁担当官の発言意図を汲みながらの手探り対応を余儀無くされている状況は変わらず、「ガイドライン待ち」の事業者は依然、多い。
消費者庁ではガイドラインに記載する予定の事項について、①安全性及び有効性に関する評価等②届出に関する事項③情報開示に当たっての考え方④健康被害の情報収集体制を挙げている。11月4日に開催された、機能性表示制度の食品表示基準案を審議するための消費者委員会本会議に提出した資料で示した。
このうち、事業者がとりわけ注視しているのが①に含まれる「臨床試験や研究レビューの実施手順」と「可能な機能性表示の範囲」。「食経験に関する評価」も同様だろう。
ある事業者では、顧客から具体的な機能性表示を提示され、「こういう表示をしたいのだがどう思うか」と尋ねられるが言葉を濁すしかない。別の事業者では、有効性を示す査読付き臨床試験論文を発表しているが、1報のみ。「それでも機能性表示できるのだろうか。追加で臨床試験を行う必要があるのだろうか」と悩みが尽きない。
病者対象論文の取り扱いについても曖昧模糊としている。この点、報告書からは読み取れないからだ。「認めない」とする消費者庁の意向がこのまま通る可能性が高いと見られるが、加齢等に伴う身体変化や疲れなど、健康と疾病の境界域を明確にできない機能を検証する場合の被験者の取り扱い方が判然としない。
ガイドラインの内容を早く知りたいのは、今月9日に機能性表示制度を了承する答申を条件付きで取りまとめた消費者委員会も同様だった。
消費者委員会の河上正二委員長は9日に行った記者会見の中で、「そもそもガイドラインなしに基準を問題にするということが本当にできるのだろうかということは(委員の間で)大きな話題になった」とコメント。ガイドラインは審議対象ではなかったが、機能性表示制度を審議するにはやはり必要不可欠だったとの考えをにじませた。
9日の消費者委員会本会議に出席した消費者庁の川口康裕次長はガイドラインについて、「(機能性表示制度の)運用に当たっての消費者庁の解釈を示すもの」だと委員に説明。また、仮にガイドライン違反があった場合に関し、「直接の根拠として処分することはできない。あくまでも根拠は食品表示法の要件を満たしているか」になると述べている。
消費者保護に万全に機能する。国の成長戦略の妨げにもならない。これらを両立できる解釈が消費者庁には求められているところだが、行方は判然としないまま年を越すことになる。