対応是が非 活発化した臨床研究 2014年業界動向 (2014.12.25)
食品の新たな機能性表示制度の行方に対する懸念に始まり、終わった年。健康食品業界にとって2014年は後年、そうした年として記憶されそうだ。一方で、景品表示法や製造所固有記号ルールの改正など、業界の将来に大きな影響を及ぼしそうな行政動向が見られたことも忘れてはならない。機能性表示解禁前夜の業界の1年を駆け足で振り返る。
健康食品を巡る行政の動きの中心は、何と言っても機能性表示制度の行方だった。政府の規制改革会議で機能性表示解禁が検討項目に浮上したのが昨年2月。それからわずか3カ月後の同年6月には閣議決定を経て政府方針に至り、昨年末から今夏にかけての検討会、その後の消費者委員会で議論を重ね、来春には制度が創設される。業界の長年の悲願だった機能性表示が遂に現実のものになる。来年早々には関係通知やガイドラインも整備される見通しだ。
行政の動きではこのほかにも、景品表示法が改正され、都道府県への措置命令権の付与や、事業者の表示管理体制の整備が義務化された。さらに、2016年春までに課徴金制度が導入されることも決まった。
また、機能性表示制度とも絡むが、食品表示法に基づく食品表示基準の検討にも関心が集まった。製造所固有記号のルールが改正される見通しとなり、今後、対応が急がれる。
一方、特定保健用食品(トクホ)では審査基準や指導要領などが改正され、機能性に関するエビデンスの信頼性を向上させるとともに、代表的な保健機能については具体的な試験内容を例示した。
他方で、産業界の動きを見ても、14年は機能性表示制度の行方に一喜一憂された。トクホ並みの厳しい安全管理や最終製品の機能性研究が求められたことは、ある程度予想されていたが、機能性成分の特定が困難な素材が要検討となり、制度発足当初は対象から外されたことには、ため息をつく事業者が多かった。併せて栄養機能食品の対象であるビタミンやミネラル、システマティックレビュー(SR)の知見情報から病者対象の試験結果が外されるとの消費者庁の考えが伝わったことでも、事業者の嘆きを誘った。
一方、食品素材の機能性研究は、新制度への対応を見越してヒト試験での検証が一気に加速した。夏以降、UMIN登録する動きも活発化している。また、原料事業者や受託事業者がSRの実施も視野に、顧客である販社のサポートに乗り出すケースも見られ始めている。原料事業者の中には、SRに関して競合他社で協同する例も複数でている。
機能性以外に目を転じると、今年の特徴の一つとして、「ハラル認証」を取得する事業者が増えたことが特筆される。「ハラル認証」は、イスラムの教えで許された商品を認証するもので、食品のみならず製造工程や流通などにも及ぶ。
近年、国内でもムスリム(イスラム教徒)の市場が拡大していることで、自治体単位で認証取得を推奨する動きがある。また、海外市場については、中東市場というより、マレーシアやインドネシアといった東南アジア諸国のムスリム市場にアプローチしたい事業者が認証を取得するケースが多く、新たな市場開拓の動きと見て間違いないと言えそうだ。
健康食品業界では素材や製品のみならず、工場の認証を事実上取得するところまで出始めており、こういった先行組の成功如何で今後この動きが加速するか否かが分かれるとみられる。