認知症対策は国家戦略 5人に1人が罹患(2015.1.22)
先頃、厚生労働省研究班の推計で2025年に認知症罹患者は最大で730万人に及び、65歳以上の高齢者の5人に1人が罹患することが分かった。認知症高齢者は12年に462万人と算出されているので、13年間で約270万人増加する。研究班は、60年には高齢者の3人に1人にあたる1154万人に達すると推計している。
厚労省は13年度に認知症対策オレンジプランをスタートさせ、14市区町村で「認知症初期集中支援チーム設置促進モデル事業」を進めている。そのひとつ、東京都世田谷区は18年度、都立梅ヶ丘病院跡地に整備する保健医療福祉の拠点に認知症在宅生活サポートセンターを開設する。早期対応や早期支援、ケアマネージャーの支援、家族介護者のサポートなどに取り組む構想だ。
オレンジプランの最終年度は18年度だが、「それ以降は国家戦略に位置付けられる予定」(厚労省担当官)という。
【 解説 】 介護報酬改定で認知症ケアは増額
認知症対策を国家戦略として取り組むことは昨年11月に公約された。同5~7日、都内で開かれた「認知症サミット」には世界10カ国以上から関係者が来日。安倍晋三首相は参加国に向けて「我が国の認知症施策を加速するための新たな戦略を策定するよう、厚生労働大臣に指示をする。新たな戦略は、厚労省だけでなく、政府一丸となって生活全体を支えるよう取り組む」と宣言した。
安倍首相の指示を受けた塩崎恭久厚労相は①医療・介護の切れ目ない提供による早期診断・早期対応②認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けた省庁横断的に認知症に関わる総合的な戦略③認知症の方本人や家族の視点に立った施策の推進―の3点を示した。
認知症対策の強化は今年4月の介護報酬改定にも顕著に反映される。全体改定率がマイナス2.27%に決定した中で、認知症ケアに対しては通所系サービス、訪問系サービスとも手厚い措置が講じられる方針だ。
さらに認知症対策ではサプリメントの活用もクローズアップされ始めた。認知症サプリメント研究会(代表世話人・田平武順天堂大学大学院教授)が昨年10月に開いた研究会では、クルクミンやフェルラ酸などの有用性が報告された。
だが、認知症サプリメントが医療・介護現場で活用されるまでには一定の時間がかかるだろう。介護老人保健施設で認知症入居者を治療する医師は「保険診療を行う場で認知症サプリメントを患者や家族に勧めることには、現状では抵抗を持つ医師が多いのではないか」と疑問を示す。一方で、この医師は摂取には前向きな見解だ。
「認知症対策には良いと思われる手段をどんどん取り入れることが大切だ。自然由来のサプリメントなら積極的に試してよいと思う」。
認知症対策には官民が一体となって取り組むことが必須だ。多様なアプローチが切望されている。