グルコサミン 機能性表示可能か 病者食も選択肢に(2015.2.26)
2月14日、グルコサミン研究会の11回目となる学術集会が都内で開催され、機能性表示食品制度をテーマに特別講演を行った和田政裕・城西大学大学院薬学研究科教授(食毒性学講座、機能性食品科学講座)が、グルコサミンで機能性表示を行うには「個別評価型病者用食品」を目指す道もあると語った。
個別評価型病者用食品は、表示するには消費者庁長官の許可が必要な特別用途食品の一つで、個別に科学的評価を行うことで特定の疾患に資する旨を表示できる。潰瘍性大腸炎、慢性腎不全などの疾患患者を対象にした表示がこれまでに許可された。ただ、件数は8件にとどまる。
和田教授はこの日、「〝食品の新たな機能性表示制度〟の光と影」と題して講演。新制度で有効性評価の方法の一つとなる見通しの最終製品を使った臨床試験は「トクホ以上の厳しさ」「病者と境界域(の差)に明確なエビデンスはあるのだろうか」、研究レビューについて「著作権法の問題が出てくるのではないか」──などと〝影〟の部分を問題提起した。
その中でグルコサミンでの機能性表示は、病者対象文献の取り扱いが焦点の一つとなっている反面、個別評価型病者用食品であれば「(被験者は)病者であっても構わない。変形性膝関節症を対象に(商品)開発が可能」と述べ、グルコサミン摂取による変形性膝関節症(OA)に対する機能を報告する多くの文献を有効活用できるとの考えを示した。
グルコサミンで個別評価型病者用食品を目指す動きは以前にあった。しかし申請には至っていない。販路が限られることもあり、費用対効果がネックになったようだ。
OAに対するグルコサミンの有効性を示す文献は多い。他方、被験者はOA患者と診断された人が大半で、機能性表示食品で病者対象文献の活用が認められないとすれば、グルコサミンによる膝を巡る機能性表示は「現状では難しい」と和田教授は話す。
しかし、最近では健常者を対象にした臨床試験も実施されている。この日の学術集会でも、そうした臨床試験の結果が幾つか報告された。
長岡功・順天堂大学大学院医学研究科教授(生化学、生体防御学)が報告したもので、「新しい関節評価」と題したセッションの中で「軟骨代謝マーカーを用いたグルコサミンの評価」をテーマに紹介。健常者を対象にした臨床試験は、関節軟骨に特異的に存在するⅡ型コラーゲンの代謝・分解マーカーを用い、軟骨代謝に与える影響を評価する方法で行った。
被験者は、サッカー選手や自転車選手、女子アイスホッケー選手。長岡教授によれば、試験の結果、①Ⅱ型コラーゲンの分解と合成から見た軟骨代謝が亢進しているものがあった②グルコサミンは相対的にⅡ型コラーゲンの分解を抑制する傾向が見られた(=分解/合成比の改善)③その効果はグルコサミンの摂取を止めるとなくなる──ことがわかったという。
こうした知見が示唆するのは「疾患に罹患していない者における軟骨代謝マーカーに対する(膝の)改善効果」だと長岡教授。これにより、機能性表示食品として今後、「『グルコサミンが関節(膝)の健康の維持に役立つ』などといえることが期待される」と語った。