事実上の質疑応答90分(2015.2.26)


~食品の新たな機能性表示制度セミナー (2月23日開催)

 セミナーではパネルディスカッションも行われた。参加者から事前に寄せられた新制度を巡る疑問に、塩澤氏が答える形式。約90分にわたり、事実上の質疑応答が繰り広げられた。

 一問目は、SRにおいて査読付き臨床論文が一報しか検索できなかった場合、それを機能性の科学的根拠と見なして良いのか──。

 司会を担当した森下氏によると、多く参加者から寄せられたというこの質問に対し、塩澤氏は「ダメとは言えない」と回答。これに対して同氏は「簡単に言うと(一報しかなくても)いいってことですよね」と意訳した。機能性を説明する根拠論文がどれだけ必要なのかについても事業者の判断に委ねられることになりそうだ。

 「検討会報告書でも一報もないのはダメだとしているが、それ以上は言及していない」と塩澤氏。ただ、それが一報しかない場合のデメリットについてもこう語った。その論文を否定するような論文が新たに出てきた場合に「その機能性表示を出来なくなる可能性がある」

 逆に、SRの対象から外して良いのかどうかを尋ねる質問もあった。利用が原則認められない病者を被験者とし、かつ機能性を否定するような論文についてである。

 塩澤氏はやや悩みつつ、「安全性について考えたい場合、疾病の人への影響を見たりする上ではあるのかも知れないが、機能性の実証では必ずしも必要ではないと考えている」などと回答した。機能性表示食品の対象は境界域の人までであり、そうした論文をSRの対象とする必要はない──これが回答の主旨だと考えられそうだ。

 SRに関してはほかに、届け出たSR結果の〝更新〟について尋ねるものもあった。

 届出後、肯定的・否定的問わず新しい論文が発表されるケースもあるといえ、その場合SRを新たに行う必要があるのかどうかという主旨の質問だが、回答は「科学的観点では定期的な更新が望ましいのだろうが、更新を要件とはしてない」

 ただ、「古いものをそのまま使った場合、消費者やほかの方々から、『本当にそれでいいのか』という問い合わせを受けるかと思う」とも指摘。「そのさじ加減は企業等の方々がご判断いただく話かと思う」

 また、1月14日規制改革会議健康・医療WGの公開済み議事録にある、SRにおいて病者を対象にした論文を〝サポーティブ〟に使えるようにするとした塩澤調査官の発言に対する質問も投げかけられた。

 塩澤氏はサポーティブの意味を次のように説明した。「例えば、レビュー時に論文が少なく、もう少し説明材料が欲しいという場合、(境界域までの人に)外挿性がある、病者が入ったデータならば、(使用しても)構わないとお伝えしたまで」

 つまり、表示したい機能性の科学的根拠を説明するための「決定打」として病者対象論文は使えない。使えるようにする範囲は、外挿できることを条件に、あくまでも「支えとして」──ということのようだ。

 ただ、被験者に病者が含まれていたとしても、層別解析などにより病者に関するデータを除外できるような論文は、除外した上で使用できるという。いずれにしても、最終製品での臨床試験の場合と同様、SRでも被験者は境界域までの人が原則となる。

 ほかに、サプリメントについて、一つの臨床試験データを共通の科学的根拠にして問題ないのかどうかも問われた。複数の製品について、機能性関与成分は同一・同量であれ、その他の配合素材が微妙に異なったりする場合も考えられる。

 これに対する塩澤氏の回答は「ケース・バイ・ケースだと思う」とした上で、「香料が違うなど〝味違い品〟のようなものについては(共通の科学的根拠でも)構わないという整理にしたい」。ただ、「(機能性など)実質に影響を与えるような原料の違いなどは同じ最終製品だとは認められないだろう」。この点はガイドラインに詳細が記載されるという。

 また、こんな質問も飛び出した。疲労・目の疲れ・良質な睡眠の改善に関する表示は可能か──。

 答えはこうだ。「こういう質問をよく受けるが、文言だけではなんとも言えない。その表示の根拠(エビデンス)とマッチしているか、パッケージを含めた表示全体として変になっていないかなど、総合的に考えないとなんとも言えない」。一方で、前出のどの表現も、許されない表示のリストには入っていないという。そのため、「健康の維持・増進の範囲内で、誤認を惹起しないやり方であれば、文言だけではダメとは言えない」。

 会場から笑いを誘った質問もあった。「届出番号はどのようにして決めるのか」というもの。

 「1番を取るにはどうしたらよいのかという質問」(森下氏)とも受け取れるこの問いに対する塩澤氏のコメントは、「基本的には先着順と思うが、最初は殺到する可能性もある。厳正なる抽選も含めて我々のやり方で決めさせていただく」とした上で、「くれぐれも消費者庁の前に列をなさないようにして頂きたい」。ちなみに、新制度スタート時の届出方法は郵送になるようだ。

 また、「本当はAという機能を表示したいのだが、強気(な表示)過ぎて不安だからといって、もう少し控えめなBやCを併せて届け出るというのは止めていただきたい」という塩澤氏の回答を誘った質問でも場内は笑いに包まれた。

 表示A、B、Cのそれぞれに適切な科学的根拠があり、そのそれぞれを一つの商品に表示することは可能だが、一つの科学的根拠で複数の機能性表示を届け出るのは止めてもらいたいという。新制度は、本命と滑り止めを選ぶような「大学受験ではない」(塩澤氏)。

 一方で、「これは深い質問」と塩澤氏に言わしめたのが次の問い。機能性表示の文言は、届出が消費者庁に受理された時点で適切と判断されているという理解で良いか──。

 回答としては、消費者庁は形式的に問題がないかどうか判断するのみで、「適切」であるかどうかは判断しない、となる。

 形式的な判断とは、例えば「がん」など疾病にかかわる文言が含まれていないかどうかをチェックすること。一方で、消費者庁は「エビデンスの中身までは見ない」と塩澤氏。よって、その機能性表示が適切であるかどうかまで判断するわけではない。「ここは間違えないでいただきたい」

 他方、形式的には問題ないと判断されても、後に不適切と判断される場合もあり得る。その機能性表示が「エビデンスとマッチしていない、言い過ぎである」(塩澤調査官)ことが判明した場合だ。

 こうした場合は、「事後的な取り締まり対象になる可能性は十分にある」という。機能性表示を行うには、安全性や品質の担保のほかに、エビデンスとその表示の間に齟齬や乖離はないかを十分精査することが、事業者にとって極めて重要となる。

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