バイブル本事件 出版社に無罪判決(2013.5.23)


 都内の会社が販売していた健康食品の効果効能を標ぼうする書籍を発行し、書店を介して販売・陳列したのは未承認医薬品の広告行為に当たるなどとして、薬事法違反の罪で起訴された出版社「現代書林」の元社長および編集社員と、法人としての同社に対し横浜地方裁判所は10日、無罪を言い渡した。検察は元社長に50万円、編集社員に30万円、現代書林に50万円をそれぞれ求刑していた。

 判決では、当該健康食品は、薬事法第2条が規定する医薬品(未承認医薬品)に当たらないと判断。その上、当該書籍は02年に発行されたものであり、公訴事実となった09年~11年の間の書店での販売・陳列までに7年以上経過していることから、被告らが広告を行ったとはいえないと結論した。

 当該健康食品は未承認医薬品に当たらない理由について、毛利光晴裁判長は「商品ラベルなどに効能・効果の記載は一切なく、むしろ健康食品との記載があり、商品単体としては医薬品とは言えないのは明らか」であるとともに、「当該書籍とセット販売されていたわけではない」と指摘。また、「(当該書籍とは別のところで)効能・効果を宣伝した事実も立証されていない」と述べた。

 一方で、争点の一つとなっていた当該書籍の発行、陳列・販売が広告に当たるかどうかについては、「(販売会社と)タイアップして出版されたものであり、(当該健康食品の)販売促進を目的としていたことは明らか」だと指摘。そのため、「(当該健康食品の)医薬品性が肯定された場合には、広告に該当するといえる」と述べた。条件付きで書籍の広告性を認める判断を示したものとも受け取れる。

 この事件では、当該健康食品を販売していた会社社長も同法違反で起訴されており、現在も公判が続いている。

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 元社長らが神奈川県警に逮捕されて以来、一貫して無罪を主張していた「現代書林」の坂本桂一社長は、判決後に横浜市内で会見を行い、「100%無罪を信じていた」と改めて述べた。一方、「判決理由に納得いかないところもある」とし、「(当該書籍は)読者のニーズに応え、丹念な取材と時間を掛けてつくった、あくまでも書籍。これを広告物だという裁判所の判断は遺憾」だとコメントした。

 この事件では、11年1月に現代書林を神奈川県警が強制捜査した後、同年10月に元社長ら3名を県警が逮捕、同12月に横浜地検が起訴と、逮捕から判決までに1年6カ月以上を要した。現代書林弁護人の永野剛志弁護士は会見で、「重い法定刑ではないにもかかわらず、これだけの時間がかかってしまったことは問題」だと述べ、捜査側を強く批判した。

 また永野弁護人は「薬事法と健康増進法とでは法律の立て付けが大きく異なる。薬事法で健康食品を縛ることに、そもそもの問題がある。(当該健康食品の)『キトサンコーワ』は明らかに健康食品であり、それを薬事法で規制するというのは(同法の)拡大解釈。罪刑法定主義の原則にも反する」と述べ、健康食品に対する薬事法執行体制のあり方にも疑問を呈した。

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