合理的な推定値を容認へ 栄養表示基準改正案(2013.5.9)
消費者庁は、食品の栄養表示に関するルールを定める栄養表示基準の一部改正案をまとめ、合理的な方法で算出した数値であれば、制度上の誤差許容範囲に縛られず表示を認める新ルールを設ける。今月中にも意見募集を開始し、その後消費者委員会の食品表示部会での議論を経て正式決定する見通し。
栄養表示は、消費者が食品選択する上での適切な情報提供を目的に、栄養素量や熱量などを表示するもの。現行は任意表示であり、表示する場合は栄養表示基準のルールに従った表示が義務付けられている。
現行の栄養表示基準では、定められた分析法を用いた数値と、実際に表示された値との誤差許容範囲を±20%以内などとしてある。新たに追加するルールは、原則この誤差許容範囲を維持しつつも、合理的な推定により得られた値であれば表示を認めるというもの。ただ、現行制度に従って表示を行っている食品との違いを明確化するため、表示する際には推定値である旨の表示や、根拠となった資料の保管を求める。なお、特定の栄養素の強化や逆に減らしてある旨を表示する、いわゆる強調表示を行う場合は対象としない。
一方、合理的な推定などの方法については、公的なデータベースなどを活用した算出値や、同一レシピをサンプル分析する方法などを想定している。
なお、改正案では低含有量食品の誤差許容範囲拡大も併せて盛り込んだ。たんぱく質の例では、100㌘当たりの含有量が2.5㌘未満の場合、±0.5㌘までの誤差を認める。
栄養表示は、今国会で成立を目指す食品表示法で、施行後5年以内に原則全ての食品に対し表示を義務付ける方針が出されている。この問題について議論した同庁の検討会では、この義務化に向けた環境整備として、誤差許容範囲に縛られない計算値方式の導入などを求める報告書を取りまとめており、今回の基準改正は、この検討会報告を受け、現行制度下でも栄養表示が可能になる対象を拡げる狙いがある。
実際、同庁が昨年度に行った栄養表示に関する委託調査によれば、市場に出回っている食品の栄養表示や含有量を調べたところ、原材料に含まれる栄養成分量の違いが大きく影響するシンプルな調理加工食品では、表示値と実際の分析値がかなりの確率で誤差許容範囲内に収まらなかったという結果が出た。農作物や水産物は産地や季節要因、また種の違いなどにより、栄養成分量にばらつくケースは多く、栄養成分表示の難しさが改めて浮き彫りになっていた。
なお、今回の改正案を議論した、4月26日の消費者委員会の食品表示部会では、この新ルールを追加する改正案については概ね了承を得たが、推定値であることを表示する方法については、同庁が提示した案を巡り意見が割れた。異を唱えた委員からは、今回の改正案の中身が日本独自の方策であり、海外制度との整合性が取れないことや、栄養表示そのものについて根本的な議論が必要だとの意見が出た。このため、表示方法については6月に開催する次回の部会でも再度検討する。