蹴脂茶、食安委判断変えず 異論・反論を退ける(2015.5.21)
トクホに申請された飲料「蹴脂茶」の安全性を評価していた食品安全委員会は12日、同委・新開発食品専門調査会がまとめた「安全性を評価することはできない」との結論を了承、消費者庁に答申した。今後、消費者委員会新開発食品調査部会が引き続き審議する予定。同成分を機能性関与成分にした機能性表示食品の届出を消費者庁が受理したことに、消費者団体などから非難の声があがっており、同庁の対応が注目されている。
12日の会合後、食安委事務局は記者会見を開き、「安全性に問題があると言っているわけではない」と強調。一方、「現状では安全だという評価はできない」と述べ、安全性を評価するには科学的根拠データが現状足りないと主張した。
蹴脂茶はエノキタケ抽出物を関与成分にしたもので、「体脂肪が気になる方や肥満気味の方に適する」という保健の用途の表示許可を、同原料を開発したリコムが申請。評価書によれば、同社は作用機序についてβ3アドレナリン受容体刺激作用と、非特異的βアドレナリン受容体刺激作用を説明していた。
食安委より先に審議していた消費者委員会新開発食品評価第一調査会は機能性、作用機序ともに了承していた。しかし、食安委調査会は作用機序を強く疑問視した上で、仮に作用機序が説明通りであったとしても、βアドレナリン受容体刺激作用によりさまざまな臓器に影響を及ぼす「可能性は否定できない」と指摘。その可能性を否定できる科学的根拠が、提出資料では十分に示されていないと判断した。
評価書案と何ら変わらない結論となったが、食安委事務局によると、評価書案のパブリックコメントには36件の意見が寄せられた。大半が疑義や異論を申し立てるもので、食安委は国民の意見をことごとく退けたことになる。
公表された意見を見ると、消費者委が了承した作用機序を食安委が事実上否定したことへの疑問の声も目立つ。「越権行為」だなどと強く非難する意見もあがったが、食安委調査会の回答は「作用機序の是非を評価したのではなく、その作用機序を前提に安全性を評価した」。また、「本食品の効果について否定するものでない」とし、消費者委員会の判断に配慮して見せた。
しかし議事録を見ると、「私は機序がβ3だというのが薬理学的に言って信じられない」「個人的にはβ3では効いていないと思っている」などと発言した委員がいて、作用機序の是非が議論になっていたことは明白。食安委事務局も、作用機序を否定するかのような答弁を12日の会見で行った。
パブコメではそのほか以下のような意見が寄せられた。
食品成分なのでβアドレナリン受容体刺激作用は医薬品よりはるかに弱い▽ヒト試験で有害事象は認められていない▽評価できないという結論は疑問▽注意喚起表示により安全性を評価することが可能ではないか▽誰もが納得できるようなフェアな判断をして欲しい▽エノキタケは健康被害を及ぼす可能性がある食品と誤解されかねない▽最近の食品事情でいくと評価できないということも致し方ない──。
βアドレナリン受容体刺激作用は医薬品よりはるかに弱いという意見に対し専門調査会は、同作用を念頭に置いた安全性試験の結果や、その作用の強さを医薬品と比較できる資料が示されていないなどと反論。また、同作用が「医薬品と同様の影響をもたらさない作用なのかを判断できる資料も示されていない」などとも主張しており、この作用機序が説明される限り、医薬品並みの安全性試験データを要求する姿勢を見せている。